アナログ・モデリング(テープエコー)ディレイ特集2016年4月19日

アナログ・モデリング(テープエコー)ディレイ特集

ディレイ・エフェクトはギターの音作りを司る上で欠かせない要素の一つです。現在ではBOSSのDDシリーズに代表されるようなデジタル・ディレイ、MXRのCarbon Copyのようなアナログ・ディレイの2種が主に使われていますが、それらの遙か前から存在した、いわばディレイ・サウンドの元祖とも言えるものが「テープエコー」です。

1958年に発売されたEchorec、その後1959年に発売され大ヒットしたEchoplexは、いずれも60〜70年代に、様々なロックミュージシャン、ギタリスト達に使用され、いまや伝説的な存在になっています。その後、遅れること10年、1974年RolandがSpace Echo RE-201を発表。現在でも使われるこのモデルは、国産テープエコーとして大人気を博すに至りました。しかし、様々な面で制約の多いテープエコーは徐々に廃れ、その後、アナログ・ディレイに取って代わられることとなります。

テープエコーの原理

テープエコーは非常に原始的な機構を持つエフェクトで、カセットテープの内部にも使われている磁気テープ、あるいは金属テープをループ走行させて、随時録音と再生を行い、遅れた音を得るという仕組みです。その構造は以下のようになっています。

テープエコーの仕組み テープエコーの仕組み

テープに合わせてヘッドが複数ついており、それぞれ消去(白)、録音(赤)、再生(青)となっています。ループ状のテープは走行しながら、順番に消去→録音→再生を行います。録音された音が再生ヘッドに至るまでに時間がかかるので、音が遅れて再生されるという仕組みです。再生ヘッドだけ複数あり、これらのヘッドを連続して通すことで、2重、3重のエコーが得られます。一番最後のヘッドだけを使うとロング・ディレイ、最初のヘッドだけを使うとショート・ディレイとなります。テープのスピードを落とすと、ディレイタイムは長くなり、その逆も可能ですが、再生環境が変わってくるため、得られる音質にも変化があります。

テープエコーの欠点と特性

テープエコーの欠点として、テープ自体の劣化、テープ走行時のノイズの混入、走行速度の維持など、一定のパフォーマンスを得ること自体が難しいというところがあります。テープを張って録音再生を繰り返すのだから、これはある意味で当然と言えるでしょう。しかし、ともすれば欠点と思われがちな劣化した音やノイズが、音楽的に暖かいとしばしば語られます。それこそが、テープエコーが支持を受け続ける最大の理由となっています。

また、ギターエフェクターとしてではなく、本来がレコーディング機器として作られた機器では、信号劣化を抑制するためにエコー部分とは別に、高品位なプリアンプを内蔵しているものもあります。Echoplexのプリアンプ部分に至っては、現在それに特化したモデリングエフェクターが多数存在するほどです。

しかし、現物のテープエコーは高価で巨大な上にデリケートで調整が不可欠と、ギターのエフェクトとして単独で使用するには非常にハードルが高い機器です。

アナログ・モデリング・ディレイの代表的なモデル

近年、デジタル・ディレイの残響音を劣化させてノイズをまぶしてテープエコー風のサウンドを狙ったモデルや、最初からテープエコーのサウンドを目標に制作されたアナログディレイ、果ては過去に使われたテープエコーマシンをシミュレートしたモデリングエフェクターなど、様々な製品が世の中に溢れています。現在、テープエコーのサウンドを得たい場合、それらを使うのが一般的でしょう。今回、その中から特に評判の高いモデルをいくつかピックアップしてみましょう。

BOSS RE-20 Space Echo

Rolandが1974年に発表した、スプリングリバーブ搭載のエコーマシンRE-201を、現代の技術でシミュレートしたモデル。コンパクトエフェクターではなく、ツインペダル仕様のものとなっています。3つある再生ヘッドのどこを選択してディレイ成分を得るかをコントロールで選択、それ以外はフィードバックとディレイタイムの量の調整と、ディレイマシンとしては標準的なコントロールにとどまりますが、外部エクスプレッションペダルを使うことで、パラメータをリアルタイムに調整できるところなど、他のBOSSのマシンと同様の使い勝手の良さを誇ります。タップテンポ機能を有し、最長6秒までのディレイタイムが可能。また、ペダルを踏み続けることで、発振の効果を得ることも出来ます。テープの走行を模したLEDパネルがあるなど、BOSSらしい工夫も。


BOSS RE-20 Space Echo

Jim Dunlop Echoplex Delay EP103

JimDunlop Echoplex Delay EP103

60~70年代、ギターサウンドに強い影響を及ぼしたEchoplexを、通常のエフェクターサイズで再現した物がこれ。ひとつの機器の再現のみを目指した、ある意味では潔い仕様で、エイジモードというモードをオンにすることで、暗い音質にテープサチュレーションが掛かったような、ヴィンテージトーンに近づけることができます。現代風のディレイなりに、外部スイッチを繋ぐことでタップテンポ入力が可能です。ディレイタイムは750ミリ秒までと現代の機器では控えめな数値になってはいますが、それでも当時のテープエコーからするとあり得ないロングディレイです。


Jim Dunlop Echoplex Delay EP103

Keeley Multi Echo ME-8

Keeley Multi Echo ME-8

モディファイ・エフェクターで有名なKeeleyの空間系エフェクター。Multi Echoの名の通り、多彩な空間系エフェクトを搭載した一台となっています。コーラス効果が2種類、ディレイ3種類、リバーブ3種類を搭載しており、一つを選んで使用できます。ディレイのモデルはテープ、アナログ、デジタルの定番3種類で、テープエコーモードではすり減ったテープの音色を再現。また、コーラスのヴィンテージ・モードにおいても、ダブルトラックにおける自然なコーラスを再現しています。


Keeley Multi Echo ME-8

DigiTech OBSCURA

4種類のディレイ・モデルを備えたDigitechのエフェクター。小さな筐体から想像する以上に多彩なサウンドをつくることができ、モードはそれぞれアナログ、テープ、ローファイ、リバースの4種。ローファイは初期のデジタル・ディレイのようなサンプリングレートの低いサウンドを再現。6種類のコントロールは通常のディレイのものと大差ありませんが、残響音を制御するTAILSスイッチを含め、サウンドの追い込みには必要十分。延々と続く発振をコントロールするリピートホールド機能もユニークです。タップテンポ機能付き、スイッチングの際に誤動作を防ぐためのガード用パッドが付属。一風変わったディレイは、デザインも個性的です。


DigiTech OBSCURA

Wampler Pedals Faux Tape Echo

歪みペダルで人気のアメリカのブランド、Wamplerのテープエコーシミュレートディレイ。ディレイ音の生成はデジタル、入出力部と減衰する際のモジュレーション成分をアナログで生成し、テープエコーの特性を非常に緻密に再現しています。shadeというディレイ音の質感を調整するコントロールを持ち、Faux Tape Reelというセクションでは、movementとswayという二つのコントロールによって回転するテープのフラッター成分を再現します。なお、このディレイにはバージョンが新旧二つあり、旧バージョンはタップ機能と上記のFaux Tape Reel部がなく、新バージョンで明らかなバージョンアップがなされているのがわかります。現在ではそちらを手に入れるべきでしょう。


Wampler Pedals Faux Tape Echo

WAYHUGE Echo Puss

WAYHUGEの人気モデル「AQUA PUSS」に対して、こちらはより暖かみのあるテープエコー的なサウンドを得られるディレイ。高品位なアナログディレイのサウンドを、シンプルなインターフェースで実現できるように設計されており、コントロールは通常のディレイにも装備されているものが並んでいます。その中にはSpeedコントロールもあり、モジュレーションディレイとしても活躍します。アナログながら、最長600msまでのロングディレイに対応。


WAYHUGE Echo Puss

Alter Ego 2 Vintage Echo

Alter Egoはデジタル機器の定番メーカーT.C.Electronicsとアメリカの有名ギターショップのProGuitarShopのコラボレーションで生まれたディレイ・ペダル。これはその最新版とも言えるペダルです。ヴィンテージエコーの伝説的モデルのEchoplex、Echorecを再現したサウンドに加え、デジタルディレイの銘機TC2290を模したサウンドまで、全11種の幅広いディレイ・サウンドをモードで切替可能。さらに、TCの他のペダルと同じように、Toneprint機能で世界中のカスタムトーンを受信して、モードの一部として運用できます。他にもルーパー機能や、同社のFlashback Delayと同じく、タップテンポを足ではなく、ギターでリズムを刻むことで設定できるAudio Tappingなど、現代的な機能も目白押しとなっています。


TC Electronic Alter Ego 2

Alter Ego X4 Vintage Echo

上記のAlter Ego V2の原型となったモデルで、4つのスイッチを装備しプリセットを保存できる大型のディレイです。ディレイのモードは上記のAlter Ego 2を越える全12種。それに加えてTonePrintを常時4つ保存して選択可能。拡張性も素晴らしく、40秒まで可能な強力ルーパー、ステレオ入出力、符割り設定機能など、スタジオ機器に匹敵する大型ディレイマシンとなっています。プリセットを3種保存して、マルチチャンネル・ディレイとしても使用可能で、外部エクスプレッション・ペダルを装着すると、ディレイタイム、フィードバックなどを外部でリアルタイムコントロール可能。


TC Electronic Alter Ego X4

KORG SDD-3000 PEDAL

KORG SDD-3000 PEDAL

1982年、コルグから発売されたデジタルディレイの銘機SDD-3000を4スイッチのペダルに押し込んだのがこのモデル。銘機の復刻という発想はたびたび見かけますが、このモデルはサウンドの幅という点で、単なる復刻ではなく完全に別のモデルに近いものになっています。オリジナルのSDD-3000を含め、ANALOG、TAPE、REVERSEなど、全8種のディレイ・モデルを搭載。その中には幻想的なサウンドを生み出すKOSMICやディレイ音のピッチを変えていくPITCHなど、個性的なモデルを含んでいます。モジュレーション、フィルター機能は勿論、4ペダルの利点を生かしたマルチチャンネル・ディレイとしても活躍。MIDI制御可能で、オプションのフットコントローラーでは、パラメータを複数一気に制御できます。また、オリジナルのSDD-3000と同じく、高品位なプリアンプ機能を内蔵しています。


KORG SDD-3000 PEDAL

Source Audio Nemesis Delay

Source Audio Nemesis Delay

独特のルックスでひときわ目を引く製品が多いSource Audioですが、これはそんな同社が3年も掛けて作り上げたディレイ。ピッチシフト機能を内部に有し、それを利用することでテープエコーのアナログなサウンドを再現します。完全なるモデリングではなく、アナログをも再現できる多機能なデジタルディレイと言うべき製品になっており、テープエコー、アナログディレイのモードを始め、リバースディレイ、モジュレーション、スラップバックなど用途の異なる様々なスタイルのディレイを24種類も内包。プリセットを128種類保存でき、マルチチャンネルディレイとしてMIDIコントロール可能。また、専用のアプリを使えばフリーライブラリからプリセットをダウンロード適用可能と、TC ElectronicsのTONEPRINTに近い機能も持っています。


Source Audio Nemesis Delay

FREE THE TONE FT-1Y FLIGHT TIME

FREE THE TONE FT-1Y

純国産の最高峰に位置するブランドFREE THE TONEのディレイペダル。DSPでの高速演算をベースに高音質なディレイを実現し、演奏中の曲を解析してディレイタイムをテンポに調整する「リアルタイムBPMアナライザー」、設定したディレイタイムから、それをややずらして再生する「ディレイタイム・オフセット機能」という世界初の機能を二つ搭載しています。ディレイ音にはハイパス、ローパスを掛け、アナログ、テープ的雰囲気を再現可能。ループは出来ないものの20秒の録音機能、ディレイ音の位相変換、MIDIコントローラーによるパラメータのリアルタイムコントロールなど、現代的な機能を全て網羅。ドライ音のオンオフが可能なところを見ても、スタジオ機器を視野に入れた一台と言えるでしょう。ただ、その平坦で飾り気の無いルックスは好みが分かれそう。


FREE THE TONE FT-1Y FLIGHT TIME

Empress Tape Delay

Empress Tape Delay

昨今、ハイクオリティなエフェクターで台頭してきた新興ブランドEmpressですが、このTape Delayはそんな同ブランドのテープエコーシミュレートディレイです。テープエコーのシミュレートにありがちなノイズを皆無と言えるまでに落としつつ、肝心のディレイ音は美味しいテープのサウンドを完璧に模倣した逸品となっています。テープの劣化具合をシミュレートする他、ハイパス・ローパスフィルター、モジュレーション、タップテンポに合わせて符割りを設定する機能、さらにアドバンストモードというモードで起動することによって、プリセットを設定し切替を行うマルチチャンネルのディレイとしても使えます。これだけの機能を小さな筐体に収めているのは驚異的ですが、同価格帯のハイエンドモデルと比較すると、ループ機能が無いのが唯一の弱点。


Empress Tape Delay

strymon El Capistan

strymon El Capistan

strymonのテープエコー再現ディレイマシン。上記のDecoと比べても明らかにディレイのみに特化して作られた設計となっています。スイッチで3つのモードを選択できますが、テープエコーの再現というところに準ずるものであり、固定された3つの再生ヘッドから一つを決めるモード、3つの中から2つを選んでダブルで鳴らすモード、再生ヘッドの距離を自分で決めるモードと、単なるディレイの枠組みに当てはまらないタイプセレクトが可能。その設定にはある程度のテープエコーに対する知識が不可欠となりますが、それだけに得られる音は真に迫ったものです。ほかにもテープの劣化具合やピッチの揺れも自在に設定可能。現代のディレイには定番となっているループ機能も完備し、まさに最強のテープエコーマシンの一つと言えるでしょう。


strymon El Capistan

strymon Deco

strymon Deco

strymonは空間系エフェクター最高峰に君臨し続けている名ブランドですが、このDecoはただの空間エフェクターとは違います。エフェクターというよりも、異なる意図を持ったテープデッキ2台を一台でシミュレートしているといった方が正しいでしょう。「テープサチュレーション」セクションでは、テープならではのアナログ的クリップを与え、「ダブルトラッカー」というセクションでは、テープエコーや、コーラス、フランジ効果を与えます。そのシミュレート効果は絶品で、オリジナルのテープデッキに迫ったもの。気持ちの良い歪み感と暖かみのある残響音という、二つの望みを一度に叶えてしまう一台です。入力はギターレベルとラインレベルを両方受け付けることができ、ステレオ出力が可能。ギターエフェクターという使い方のみならず、実際にレコーディングでも威力を発揮します。


strymon Deco


以上、テープエコー独特の幽玄なサウンドが得られるディレイの紹介でした。

最終更新日 : 2016/08/16

パッチケーブル 自作