Fractal Audio Systems社の「Axe-Fxシリーズ」は、ハイエンド・ギタープロセッサーの嚆矢(こうし)となる製品です。250を越える膨大なアンプモデリング数や、一切の妥協を廃したスタジオクオリティの音質は他と一線を画しており、まさに最高峰。その高価な値段もあって、ギタリスト憧れの製品として君臨しています。初代Axe-Fxから数種のモデルチェンジを経て、2021年時点の最新モデルは「Axe-Fx III MarkII」。
AXE FX III – BEST OF THE BEST?
従来の「Axe-Fx Ultra」のさらに2倍の処理速度を実現してパワーアップした「II」、IIの後継機種である「II XL」、II XLからさらに2倍以上のパフォーマンスを実現した「III」、そして2020年11月に登場した最新モデルが「Axe-Fx III MARK II」です。フラッグシップ・モデルの名に相応しい圧倒的なスペック、質量共に最高峰のモデリング、様々な用途に対応する多種多様な入出力を実現。世界最高峰のオールインワン・プロセッサーです。
Fractal Audio Systems Axe-Fx III MARK II
「Axe-Fx III」が持つ実機のアンプに極めて近い高品質かつ音楽的なサウンドを、フロア・ユニットとして落とし込んだ、プロクオリティのアンプモデラー/FXプロセッサー。ARMコア1つとSHARC+コア2つで構成されている3コアの「Griffin」DSPを搭載、グラフィックには専用のプロセッサーを採用し、メインDSPはサウンドの処理のみに注力するため、その力を存分に発揮します。高い操作性と堅牢性を備え、プロの現場で十分に活躍するモデルです。
PODで一世を風靡したLine 6が満を持して発表したハイエンド・ギタープロセッサー群。当初はHelix Floorのみの展開でしたが、後にスタンダードモデル「Helix LT」、ペダルタイプの「HX Stompシリーズ」という3機種に枝分かれしました。
Line 6 HX Stomp XL これ1台でサウンドメイクは完成!ゼロから音作りし、DAWレコーディング&パフォーマンス。新たな芸術表現に挑戦?!
Helix Floor
フロアタイプの「Helix Floor」は、一目見て分かるカラフルな画面とスイッチ類が特徴的です。これはライブでの視認性を最大限考えた仕様のためであり、音色を組み立てる際にも直感的でわかりやすいという利点があります。スイッチ毎に文字を表示する液晶が付き、それを使い、ハンズフリーで音色を組み立てられるのは、目から鱗とも言える機能。しゃがみ込んでダイヤルを回しまた弾くという作業が不要になっています。
IRデータのインポートなど、現在の機種では当たり前となった機能はしっかりと内蔵。エフェクトのモデリングに対しては各エフェクターの回路部分をそのままシミュレートしています。「Fractal Axe-Fx」におけるTone Match機能や「KEMPER」におけるProfiling機能のように、アンプの音色を真似る機能こそありませんが、CPU二台搭載のデュアルDSPで送り出す音の質感や、エフェクト数はAxe-Fxに次ぎ104種を誇り、決して引けを取っていません。数種存在するフロアタイプの中でも、エクスプレッションペダルが標準搭載されているところや、2系統のセンド・リターン端子を最大限活用した母艦としての活用法にも柔軟であり、ライブでの使用を軸として考えると他の追随を許さない実用性の高さです。
Helix Rack
一方Helix Floorのラック版「Helix Rack」は、内部はFloorとほぼ変わりなく、ラック型ゆえにフットスイッチが搭載されていません。単体では足下での切替が不可能なため、レコーディングでの使用をメインとしたいプレイヤーに向いています。ライブ使用には向きませんが、全ての機能を足下でアクセスするためのHelix Controlという純正フットコントローラーを利用することができます。
「Helix LT」はHelix Floorの下位にあたる製品。下位に当たるとは言え、同じくデュアルCPU搭載であり、アンプモデリング数やエフェクト数は上位のFloorと全く同じ。フットスイッチ部にディスプレイがないことや、エフェクトループの数が少ないことなど、細かい部分において機能が削られていますが、音質部分についてはほぼ上位譲りです。拡張性などがあまり必要ではないと考えるギタリストにとって、この値段でHelixの音色が手に入るというのは嬉しい選択肢でしょう。
2018年10月に登場した「HX Stomp」は、ペダルが排除されフットスイッチは3つのみとHelixシリーズ中最もコンパクトで、最もリーズナブルなモデル。足元の操作がシンプルなため頻繁にパッチを切り替える動作は苦手で、エフェクトブロックの同時使用は最大6個までと、Helix LTからさらに機能制限されているものの、300種類以上のアンプ/キャビネット/エフェクト、ルーパー、Line6の人気エフェクトを搭載するなど、サウンド面でのクオリティはフラッグシップモデルであるHelixと同等となっています。
2021年3月に登場したHX Stomp XLは、HX Stompのフットスイッチ拡張モデル。サウンドエンジンやDSP、基本的な操作系統はHX Stompと同様です。フットスイッチが増えたぶん切り替えられる音色が増えるのはもちろん、VOLUMEスイッチが埋め込み式/MODEフットスイッチ搭載により誤作動防止など操作性も向上、キャパシティブタッチ対応フットスイッチなど機能面でも強化されています。
《小さくて便利、そして最高の音質》Line 6「HX Stomp XL」 – エレキギター博士
一斉を風靡したPOD、その名を冠して登場したのがPOD Goです。Helix/HXプロセッサーから継承したサウンドを一台に凝縮しながらも、PODの特徴である”簡単操作”、リハーサルからステージ/レコーディングまでどんな場面にも使える便利さを受け継いだプロセッサーです。サウンドエディットの自由さこそHX Stompに軍配が上がりますが、エクスプレッションペダルの付属はこのモデルならでは。ワイヤレス機能を搭載した「POD Go Wireless」はギターケーブルを一切必要とせずにDAWレコーディングまでできるなど、ライブはもちろんレコーディングにも非常に便利なモデルです。
《ワイヤレスの解放感を、最高レベルのサウンドで》Line 6 「POD Go Wireless」アンプ/エフェクト・プロセッサー – エレキギター博士
Pedalboardは、アメリカはロードアイランド州に新たに登場したブランド「HeadRush」の初の製品として2017年に誕生。最新のクアッドコアCPUを搭載。開発チームはかつて最高峰アンプシミュレーター、Eleven Rackを開発した面々であり、アンプモデルが33、エフェクトのモデルは34と、数こそ控えめですが、品質はさすがに折り紙付きです。
本機種特有の装備として、他機種では数分がほとんどであるルーパー機能において20分もの録音が可能であることや、逆再生機能などが挙げられますが、なかでもタッチパネル式7インチLEDディスプレイが嬉しいところです。タッチパネルの利点を最大限に活かし、エフェクトの組み替えやパラメーターの設定が非常に直感的に可能です。機能の多いこの手の製品において、操作が直感的で簡便なのは大きなアドバンテージになりうるところで、そのシステムに余程の自信があるのか、他機種では当たり前のPC経由でのソフトウェアエディットが存在しません。PCの使用が苦手であったり、機器単体で完結させたいギタリストには、ここは逆に魅力ともなるはずです。
Introducing HeadRush Pedalboard – Featuring Sarah Longfield
外装にはフットスイッチ12個とエクスプレッションペダルを搭載。各フットスイッチが色分け可能であったり、専用のディスプレイが一つずつに付いているところなどは、「LINE6 Helix Floor」を多分に意識したと思われる設計です。
2018年10月に登場したHeadRush「Gigboard」は、同社の「PEDALBOARD」と同等サウンドクオリティを継承したコンパクトモデル。フットスイッチは4つのみ、ツマミは2つのみと非常にシンプルになりましたが、タッチパネル式7インチLEDディスプレイは健在で、アンプモデル/キャビネット/マイク/エフェクトなどはPEDALBOARDと同じものを搭載。「PEDALBOARD」からペダルを排除し、フットスイッチの数を減らし、でも機能やサウンドは同等という製品となっています。
同時期に発売された「Line6 HX Stomp」が対抗馬となりますが、Gigboardはさらにリーズナブルな価格で手に入れることができます。
老舗エフェクターブランドBOSSからは、マルチエフェクターのフラッグシップモデル「GT」シリーズの最新モデルとして登場した「GT-1000」が公式にギター・プロセッサーと名乗っています。2018年4月登場とギター・プロセッサーの中ではなかなかの後発ですが、
という点がアドバンテージに挙げられます。
BOSSのエフェクト技術は言わずもがなで、上位モデルのギター・プロセッサーにも引けを取らない機能やエフェクトの品質となっています。ポイントとなるのはアンプサウンドですが、近年ローランド及びBOSSブランドでは「Roland Blues Cube」「BOSS WAZA Amp」「BOSS KATANAシリーズ」などアンプの開発にも力を入れており、本機のアンプサウンドの品質にも期待が持てます。
2020年10月に登場した「GT-1000CORE」は、GT-1000をコンパクトなサイズに落とし込んだモデル。エフェクターボードにも組み込みやすく、幅広い用途で活用できるモデルです。
BOSSのギタープロセッサー「GT-1000」徹底レビュー! - エレキギター博士
BOSS GT-1000CORE
BOSS GT-1000 Preset 50個をギター博士が弾いてみた!
Axe-Fx XL+ |
AX8 |
Helix |
Helix LT |
HeadRush Pedalboard |
AMPLIFIRE |
AMPLIFIRE 12 |
GT-1000 |
Kemper |
BIAS Head,Head DSP |
|
アンプモデリング数 | 250以上 | 250以上 | 62 + 7 | 62 + 7 | 33 | 約20 | 約20 | – | 180以上 (※注1) |
36 (※注3) |
キャビネット数 | 42 | 42 | 37 | 37 | 15 | 4 | 4 | – | 約50(※注1) | 4 (※注3) |
エフェクト数 | 160以上 | 160以上 | 104 + 7 | 104 + 7 | 34 | 14 | 14 | 116 | 68 | 0 |
オーディオI/F | ○ | × | ○ | ○ | ○ | × | × | ○ | × | × |
ヘッドフォン端子 | ○ | × | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
エフェクトループ | 2系統 | 1系統 | 2系統 | 1系統 | 2系統 | 1系統 (※注2) |
1系統 | 2系統 | 1系統 | 1系統 |
EXPペダル | ○ | ○ | ○ | ○ | ||||||
その他機能 | ToneMatch他 | タッチパネル式ディスプレイ | Bluetooth対応 リアルタイムコントロール機能 |
プロファイリング パワーアンプ搭載モデル有 |
ソフトウェア必須 Amp Match |
|||||
重量 | 4.5kg | 5.2kg | 6.7kg(Floor) 5.4kg(Rack) |
5.7kg | 7.1kg | 1.05kg | 2.6kg | 3.6kg | 5.3kg(Head) 5.0kg(Rack) |
5.9kg(Head) 5.3kg(DSP) |
価格 | 297,000 | 210,600 | 192,240 (Floor) 158,544 |
138,240 | 140,000 | 62,640 | 83,160 | 108,000 | 249,000 | 178,000 (Head) 129,000 |
表:各モデルの仕様比較(2018/8時点)
注1:世界中のユーザーがプロファイリングした1万以上のアンプモデルが利用可能。現在も増え続けている。
注2:外付けエクスプレッションペダルとエフェクトループの共存不可。
注3:内部を自由にカスタマイズ出来るため、実質的には無数に存在。
どの製品も低価格とは言えないまでも、完全に高嶺の花であった一時期に比べると15万円を切る製品もちらほらと現れ始めました。優れたアンプモデリングはもちろんのこと、いずれも個性的な機能や特徴を持っているものばかりで、選択に迷うところも多くあるでしょう。
現在ではデジタルはアナログの煩わしい部分をカバーするために使われることがほとんどです。レコーディングでの優れた使い勝手や、運搬性の高さ、メンテナンスフリーで環境に左右されない安定した音質を得られるという、数々のメリットは筆舌に尽くしがたいものがあります。真空管で増幅するという最も原始的な手法の優位性が常につきまとうこの世界において、ようやくテクノロジーが追いついてきたと言うこともできるでしょう。また、最新鋭の技術を用いることで、最も原始的とさえ言えるヴィンテージ真空管アンプの音色を楽しむことが出来るようになりつつある、というところも面白い点です。
様々な楽しみ方や使い方を提供してくれるギタープロセッサー。今後ますます製品の質、数ともに増え続けるであろうことは想像に難くありません。
独自技術によって、アンプの動作、キャビネットやマイクまで正確に捉える、極上ギター&ベース・アンプを紹介します。
通常、この手の機器は内部のソフトウェアでアンプの音色を計算で組み立てていますが、「Kemper Profiling Amplifier」は動作原理が他の全ての機種と異なり、ハードウェアで既存のアンプの特性をまるごと模倣(プロファイル)するというものになっています。これはアンプ本体の各パーツなどの挙動を全て模倣してしまうという他に類を見ない機能であり、その特性を活かして特定のアンプをコピーしてしまう「Profiling」という唯一無二の機能を持ちます。音色自体はAxe-Fxに比べて、良くも悪しくも荒々しさや臨場感という点において上回っているように感じられますが、それもこの動作原理によるものと言えるかもしれません。その他のエフェクトのモデリングも50種以上と申し分ない量を搭載し、いずれも極めて質が高いものばかりです。
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ギター&ベースはKEMPERを使ってレコーディングされている
スタジオのエフェクター然とした「Axe-Fx」に比べて、よりアンプらしさの際立つデザインやインターフェースを持ち、レコーディングエンジニアよりギタープレイヤーを意識して作られているのは明白です。ラインナップにはアンプヘッドタイプとラックタイプの二種がありますが、フロアタイプが存在しないため、ライブでの使用には別売りのコントローラーを導入する必要があります。パワーアンプ搭載モデルであれば、キャビネットに直接つないで完全なアンプとして使用できるため、実際のキャビネットと組み合わせて自分のセッティングを確立したいとか、背面から自分の音が鳴っていて欲しいという、ギタリストらしい要望を受け入れやすい機種とも言えます。
未来のギターアンプを手に入れよう!プロファイリングアンプKEMPERについて
アンプモデリングソフトウェアとして高い人気を誇る「BIAS Amp」。Bias Headはこれをハードウェアで実現するもので、ソフトウェアのセッティングを同期させて動作します。もとよりBIASは優秀なソフトウェアとして知られていますが、ハードウェアで動作させることで、ソフトウェア版とは比べものにならないほどの優れた安定感やマッチングを発揮します。
最大の特徴として、ソフトウェア上でオリジナルのアンプを製作できてしまうというものがあります。カスタマイズできる部品は極めて細部に渡っており、真空管やトランジスタの種類、バイアス値、パワーアンプの真空管やら電源トランスなどにまで至ります。このように自分のオリジナルモデルを作る材料の組み合わせはほぼ無限といって良いほどで、様々なギタリストが実際に作ったプリセットも共有可能です。またAmp Matchという機能があり、これは他のアンプの音を取り込む、Axe-FxのTone Matchに似た機能となっています。
Tosin Abasi – “Mind-Spun” – BIAS Head amplifier [4K]
もとよりモデリング技術は非常に優秀ですが、マルチエフェクターらしさを兼ね備えた他機種と違い、エフェクトの内蔵がありません。そのような意味でもやはり純粋なアンプに近いものとして設計されていると言えます。特にアンプヘッドとして実際にキャビネットに繋いで利用することを視野に入れており、通常モデルにはパワーアンプ内蔵モデルのHeadを配し、プリアンプ機能のみ有したHead DSPをサブ的にラインナップ。他機種に比べるとやや低価格とは言えるものの、エフェクトが非搭載であることを考えると一概に安値と言えるかは微妙なところです。とはいえ、細部まで徹底してオリジナルの音にこだわれるのは他機種にはない魅力であり、現在ソフトウェアのBIASに満足している方には特におすすめできる品質です。ライブでの使用にはフットコントローラーが別途必要ですが、これには通常のMIDIコントローラーが利用できます。
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