ワーミーペダル (Whammy Pedal)

DigiTech社が開発したピッチシフターの代名詞的存在。一般的に、エクスプレッション・ペダルを搭載し、音程を滑らかに変化させられるのが特徴です。ギターソロで過激なアームアップ/ダウンのような効果を生み出すなど、多くのギタリストに愛用されています。HammerOnは、このWhammyで培われた高品位なピッチシフト技術を基盤としています。

Digitech Whammy 5

HammerOnのコントロール

– PITCH 1 / PITCH 2 フットスイッチ：
本機の心臓部となる2つのフットスイッチ。それぞれに異なるピッチシフト動作を割り当てることが可能です。基本的にはモーメンタリー式で、踏んでいる間だけピッチが変化します。

– PITCH 1 / PITCH 2 SELECTノブ：
各フットスイッチに割り当てる音程を設定します。1オクターブ上から1オクターブ下まで、半音単位でのクロマチック設定が可能です。LEDインジケーターで現在の設定音程を視覚的に確認できます。

– MODEボタン：
PITCH 2フットスイッチの動作モードを切り替えます。「Hammer On」「Impossible」「Sequence」の3種類から選択でき、これによりペダルのキャラクターが大きく変化します。

– TRILLボタン：
トリル機能のON/OFFを切り替えます。ONにすると、フットスイッチを踏んでいる間、原音と設定したピッチとの間を高速で往復するトリル効果が得られます。

– TRILL SPEEDノブ：
トリル機能がONの時、その速さを調整します。タップテンポ入力にも対応しており、楽曲のテンポに同期させることも可能です。

– DRY+ボタン：
原音（ドライ音）をエフェクト音にミックスするかどうかを選択します。OFFの状態ではエフェクト音のみが出力されますが、ONにすると原音とピッチシフトされた音が同時に鳴り、ハーモニー効果を生み出します。

サウンドの特徴

– Classicモード：従来のWhammy同様、単音での使用に最適化されたモード。
– Chordsモード：和音（コード）に対しても、より自然なピッチシフトを適用できる最新のアルゴリズム。

Hammer-On モード

本機の基本となるモード。フットスイッチを踏むと、瞬時に設定した音程へジャンプします。例えば、Aの音を弾きながらフットスイッチを踏むことで、ハンマーオン奏法のように滑らかにBの音へ繋ぐ、といったプレイが可能です。2つのフットスイッチに異なる音程を割り当て、複雑なフレーズを組み立てることができます。

Impossible モード

アーティスト、エイドリアン・ブリューのアイデアにインスパイアされたモード。あらかじめ設定した2つのピッチ間を交互に切り替えます。予測不能なアルペジオや、人間工学的に演奏が困難な（Impossible）フレーズを生成できます。

Sequence モード

本機をピッチシフト・シーケンサーとして機能させるモード。2音、3音、または5音のピッチシーケンス（音の並び）をプログラムでき、フットスイッチを踏むごとにシーケンスが一段階ずつ進みます。半音下げや1音上げといった複数のチューニングを曲中で瞬時に切り替えたり、自動でアルペジオを演奏させたりすることが可能です。

トリル機能との組み合わせ

上記の各モードは「TRILL」機能と組み合わせることができます。例えば「Hammer-On + Trill」では、超高速のハンマーオン効果やオクターブ違いの音が反響するような効果を生成。「Sequence + Trill」では、プログラムしたシーケンスを自動で循環演奏させ、シンセサイザーのアルペジエーターのようなテクノ風ギターリフを作り出すこともできます。

DRY+機能によるハーモニー

いずれのモードでも「DRY+」ボタンをONにすることで、原音にピッチシフト音が付加されます。これにより、単音を弾くだけで重厚なハーモニーフレーズを即座に生み出すことが可能です。

Whammyファミリーとの比較

HammerOnの最大の独自性は、ピッチシフトを「シーケンス」や「トリル」といったリズム要素と組み合わせ、ギターをシンセサイザーやシーケンサーのように扱える点にあります。これは従来のピッチシフターには見られなかった革新的なアプローチです。

Whammy Ricochetとの比較

Whammyと同じくペダルレスのモーメンタリー式ピッチシフターであるRicochetは、ピッチが変化するスピード（Ballistics）と戻るスピード（Return）を調整できるのが特徴でした。HammerOnは、このRicochetのコンセプトをさらに発展させ、「Impossibleモード」や「Sequenceモード」といった、より複雑で創造的な機能を付加した上位互換的な位置づけと見ることができます。

Digitech Whammy Ricochet

Dropとの比較

Dropは、ギター全体のチューニングを半音単位で下げることに特化したペダルです。HammerOnの「Sequenceモード」を使えば、The Dropのように特定のドロップチューニングを設定することも可能ですが、HammerOnはさらに複数のチューニング設定をシーケンスとして切り替えられる点でより多機能です。

Digitech Drop

購入判断のポイント

購入を検討する際は、本機が「滑らかな音程変化」ではなく「瞬間的な音程変化」と「シーケンス機能」に特化したペダルであることを理解することが重要です。従来のWhammyペダルの代替品としてではなく、まったく新しい表現を生み出すための「楽器」として捉えることで、その真価を最大限に引き出すことができるでしょう。