2020年に登場したおすすめのエフェクター15選2021年10月24日

2020年エフェクター

新型コロナウイルスが猛威を振るった2020年にも、ギターの業界ではそれに対抗するかのように新機種が続々登場しました。特に昨今エフェクターの市場では、スペックの向上したプロセッサーの能力を背景としたマルチエフェクターの隆盛が目立ち、2020年もまた例外ではありませんでした。ここでは2020年中に登場した新エフェクターを取り上げてその魅力に迫ってみましょう。

歪みペダル

VOX VALVENERGYシリーズ

VALVENERGYシリーズ

Korg社とノリタケ伊勢電子が共同で開発を手がけた極小真空管NuTubeを使用したVOXのシリーズ。コンパクトエフェクターという出で立ちながら、アンプのサウンドをそのまま踏襲したキャラクター設定を持ち、いずれもチューブアンプの持つ飽和感を見事に再現し、ギタリストにとって非常に弾き心地の良い音色を実現していると高評価を得ています。いずれのモデルも

  • エフェクターとしてのSTD
  • プリアンプとしてのPRE
  • キャビネットシミュレーターを介してミキサーやオーディオインターフェースに接続できるCAB

という3モードを搭載し、3EQとボリューム、ゲインを装備。Cutting Edge以外の3モデルについてはBrightスイッチを装備し、Cutting EdgeにはTightコントロールが搭載されます。現在の音色を波形で表示するOLEOディスプレイというユニークな表示窓を持ち、デザイン的なアクセントにも一役買っています。

シルバーの外観を持つ「SILK DRIVE」はフェンダー系のアンプサウンドに特化したモデル。透明感のあるクリーンからブルージーなオーバードライブまでをカバーするそのサウンドは、やや小型なコンボアンプのサウンドを彷彿させます。
ゴールドの「Copperhead Drive」は80年代ハードロックの代名詞、マーシャルJCM800系のサウンド。スタックアンプならではの太い中低域、粘り気のあるオーバードライブを見事に再現しています。
Mystic Edge」はVOXの代表的製品AC30をトリビュートしたもの。特徴のあるベルのような煌びやかな高域を持つクリーンからライトなオーバードライブまでをカバーします。
「黒い外観のCutting Edge」は現代的なハイゲインを実現したペダル。モチーフは5150系となっており、公式にはモダンなハイゲインと謳っていますが、ドイツブランドのメタル系アンプやメサブギーのレクティファイヤーで聴ける、切り裂くような猛烈なハイゲインには届かない印象です。しかし、他機種にはないTightコントロールにより低域の締まり具合を調整できるところなど、特に音作りの幅が広く使いやすいものになっており、純粋なメタルを演奏するのでなければ、十分なゲイン量とレンジ幅を確保しています。

VOX VALVENERGY SILK DRIVE – 伝説的ブティックアンプのサウンドを再現
VOX VALVENERGY COPPERHEAD DRIVE – 1980年代ハードロック・スタックアンプのサウンド
VOX VALVENERGY MYSTIC EDGE – VOX AC30のサウンドを再現
VOX VALVENERGY CUTTING EDGE – モダン・ハイゲインディストーション

Bogner Harlow V2 / Wessex V2 / Burnley V2

ハイゲイン系アンプEcstacyで著名なBognerのコンパクトエフェクター三機種が2020年にアップデートされました。旧型は伝説となっているNeveコンソールの設計者、Rupert Neveの手がけるトランスを内蔵したペダルとして話題となりましたが、バージョンアップに伴い、その設計思想とサウンドはそのままに筐体のスリム化が行われ、一新されたデザインで登場しました。

Harlow」は多彩なサウンドが手に入るダイナミクス系エフェクト。コンプレッション感を制御するBloomとゲインを上げていくBoostの二つのコントロールにより、パンチのあるコンプレッサーから、クリーンブースター、軽めのオーバードライブまでをカバーでき、非常に透明感のある濁りの無い音が特徴。ギターの直後に配置するのにまさに最適なサウンドでしょう。
Wessex」はローゲインオーバードライブで、トレブルとベースの二つのEQを持ち、高域にぎらつきのあるEnhancedとNormalの2種のサウンドを選択可能。
Burnley」はローゲインからハイゲインサウンドまで、いわゆるブラウンサウンドを目指して開発されており、3種のシンプルなコントロールにとどまりながらも、骨太でダイナミクスに優れるディストーションとして定番となり得るクオリティを備えています。
どの機種も敢えてトランスを介することで、サウンドを音楽的にするという思想を持って開発され、まさにその通りのサウンドが実現できています。

Bogner Harlow – ブースター/コンプレッサー
Bogner Wessex – 伝説的トーンを封じ込めたローゲイン・オーバードライブ
Bogner Burnley – 幅広い歪みを作るオーバードライブ~ディストーション

MXR CSP027 Timmy Ovedrive

味付けをしないという意味で「トランスペアレント系」と名付けられたオーバードライブの元祖であるTimmy Overdriveを、再設計して登場させた新モデル。本家をデザインしたポール・コクレイン氏とMXRとのタッグによって本家のサウンドを全面的に踏襲したものになっていながら、MXRのミニエフェクター同様の省サイズに収められています。プレミアが付く本家に比べても低価格でのリリースとなり手に入れやすくなりました。中心に配されたClipスイッチにより、3つのクリッピングを選択することができ、それぞれヘッドルーム、レンジが少しずつ変わります。メインの歪みとはなかなかなりにくいモデルですが、何か一つ足りないという時に絶妙な味付けをしてくれるこのモデル、ギタリストであれば嫌いな人はいないでしょう。

MXR CSP027 Timmy Ovedrive

その他

ELECTRO HARMONIX NANO SMALL STONE

NANO SMALL STONE

70年代に登場し一世を風靡したフェイザーの銘機、Small Stoneをスモールサイズで復刻したもの。新デザインとなってからはレトロでサイケデリックな塗装が施され、当時の雰囲気を彷彿させる外見となっています。同時代にフュージョン等で多用されたMXR Phase 90のようなうっすらとした爽やかな掛かり方も設定次第では可能ですが、このモデルの魅力はどちらかというとえぐいと評される強烈な掛かり方。特にColorスイッチをオンにした時のまるでフィルター回路を強引に動かしているかのような掛かりは、歪んだ音との相性が抜群です。

ELECTRO HARMONIX NANO SMALL STONE

strymon COMPADRE

strymon COMPADRE

ハイエンドエフェクターの雄、strymonが送り出すコンプレッサー。コンプレッサーとしてカテゴライズされていますが、それだけで語られるべきものではなく、ギターからの信号出力直後にインサートするための機能を全て備える、汎用性の高いモデルになっています。SSL社の業務用コンソールにも使われるアナログVCA回路を用いており、そのコンプレッションにはスタジオ機器のような自然で高品質なものから、ダイナコンプのようなギターエフェクターらしいものまでをカバー。さらに3種のEQブーストを備えたブースターを内蔵し、きらめくようなクリーンブーストから、TS系のような中域にコシのあるハードなブーストまで、多彩なブースト機能を併用できます。

strymon COMPADRE

BOSS OC-5

BOSS OC-5

BOSSのオクターバーOCシリーズの最新機種。オリジナルのモノフォニックオクターバーOC-2の音色を模したVintageモードと、和音に対応するPolyモードから選ぶことができ、Polyモードではオクターバーの掛かる帯域をRangeコントロールで指定可能。独自のトラッキング技術が使われ、ほぼゼロレイテンシーでウェット音を追従させることができます。本機種からはオクターブ上の音を足す+1OCTコントロールが追加され、より幅広い用途で使えるようになりました。

BOSS OC-5

MORLEY 20/20シリーズ

20/20シリーズ 20/20 DISTORTION WAH

スティーヴ・ヴァイのワウペダルで有名なMorley。2020年に向けてペダルラインナップが大きく刷新され「20/20」という名シリーズが登場しました。シリーズ共通の特徴として、17cm x 11cm程度に抑えられ、およそ1kgを切るほどの小型軽量であること、いずれも踏み込むだけで自動的にオンになるスイッチレス仕様であること、新たに開発されたバッファーが採用され、音質劣化を最小限にとどめるよう工夫されていることなどがあげられます。

ラインナップもかなり多岐に渡っており、2種のワウと「半止め」状態の3種のサウンドを持つWah Lockを筆頭とし、スティーヴ・ヴァイの代名詞Bad Horsieでは彼のサウンドで聴けるような「エグい」サウンドが得られます。その他にも、Morleyの伝統的なサウンドを踏襲したClassic Switchless Wah、ディストーション、ファズと一体化したDistortion Wah、Power Fuzz Wah、リードギターに最適な激しい掛かり方をするLead Wahなどなど、実に多彩。Morleyの独特のサウンドは根強い愛好者も多く、小型となっての登場はその魅力をさらに大きくしました。

MORLEY 20/20 Lead Wah – ハイゲインアンプでのリードギターに適したスイッチレス・ワウ
MORLEY 20/20 Power Fuzz Wah – ワウとファズが一体になったペダル
MORLEY 20/20 Distortion Wah – スイッチレスワウ/ディストーション
MORLEY 20/20 Wah Boost – WAH BOOSTのミニタイプ
MORLEY 20/20 Power Wah – 「Power Wah」のコンパクトなニューモデル
MORLEY 20/20 Power Wah Volume – 「20/20 Power Wah」にボリュームペダル機能を搭載
MORLEY 20/20 Bad Horsie Wah – 「Bad Horsie」シリーズのコンパクトなニューモデル

Jim Dunlop CBJ95 Cry Baby JUNIOR

CBJ95 Cry Baby JUNIOR

その名の通り、ワウペダルの銘機クライベイビーの小型版。さらに前より存在したCrybaby Miniほど小さくはありませんが、あくまで小型化に拘ったMiniに比べて、こちらのJuniorは単なる小型版に留まらず、サイドにスイッチを装備し、GCB95のアグレッシブなサウンドから、ヴィンテージ指向の強いふくよかなサウンド、そして暗めのサウンドまで、EQシェイピングのように3種の音色を切り替えることができます。小さすぎないことが逆に操作性の良さにも繋がっており、非常に使い勝手の良いミニワウペダルとなっています。

CBJ95 Cry Baby JUNIOR

VITAL AUDIO POWER CARRIER VA-12

POWER CARRIER VA-12

12口の出力ポートを備え、全てがフルアイソレート構造となったVital Audio社のパワーサプライ。9Vポートを9つ、残りの3ポートは9/12/18Vを可変させられるものとなっており、大型のボードや様々なエフェクターの混在に力を発揮します。総電流量も3000mAまで対応し、余程の事でなければ足りなくなることはないでしょう。12口という大量のポートを有しつつも192mmという小さな幅、365gという軽量に抑えられているところは特に嬉しいポイント。大量にエフェクターを使用するギタリストにとっては強い味方となることでしょう。

VITAL AUDIO POWER CARRIER VA-12

マルチエフェクター/プロセッサー

VALETON GP-100

GP-100

大人気マルチエフェクターAmperoを送り出したHOTONEが、より安価な製品をリリースするために打ち立てたブランドがこのValeton。サウンドの傾向はAmperoの延長上にあり、エントリーモデルながら非常に使える音がしっかりと入っています。二つのフットスイッチにはエフェクトチェインを割り当てることができ、さながらコンパクトエフェクターをラインセレクターでオンオフするような運用が可能で、これはエントリーモデルには珍しい仕様です。非常に小さな筐体ながら操作性は悪くなく、機能がシンプルに削られているのがここで功を奏しています。ベースアンプまで含めたアンプモデリングは45種、IRキャビネットが40種、各種エフェクトは50種と、レコーディングでの運用を意識した機能が充実しており、ライブや練習以上に宅録を視野に入れていることが窺えます。

VALETON GP-100

HOTONE AMPERO ONE

AMPERO ONE

ハイエンド機器に匹敵する中級クラスのマルチエフェクターという立ち位置で、一躍大人気となったAmperoの小型バージョンがこのAmpero One。第4世代のSharc DSP採用、64種のアンプモデル、60種のキャビネット、150以上のエフェクトや同時使用可能なエフェクトチェインの数など、通常のAmperoとほぼ同じクオリティを網羅しつつも、フットスイッチとXLN端子、MIDI In端子を削ることで、さらなるダウンサイジングを行い、エクスプレッションペダル込みで30cmを切る横幅にしておよそ1.2kgという小型軽量化を成し遂げています。値段も1万円ほど安くなっており、元より評価の非常に高かったハイゲイン系の音色や、アコースティックシミュレーターのサウンドがこの価格で手に入るのは大きな魅力。必要最小限に絞られた入出力端子、タッチパネルでの直感的操作からも現場での使用が意識されているようで、ライブやスタジオで実際に音を出すプレイヤーにこそおすすめしたいモデルです。

HOTONE AMPERO ONE

MOOER GE300 LITE

GE300 LITE

MOOERの最高峰マルチエフェクターGE300からエクスプレッションペダルを除いた小型版。下記に紹介するGT1000COREやHX Stompなどと違い、あくまでもフットスイッチを8つ備えた中型マルチといった立ち位置であり、そのスイッチの数を生かして外部の機器を操作するためのスイッチングアウトプットとしても機能します。MOOER独自の機能としてギターサウンドをキャプチャーして似せるTone Capture機能やIRファイルの作成などがありますが、いずれもこの機器で実現できます。同価格帯の他社製品に比べ、品質はまったく引けを取らないもののエフェクトやアンプモデルの数では一歩劣り、ルーパーが30秒までとやや短いという特徴もありますが、その分操作性は抜群で、非常に直感的に音色を作り込んでいけるところは他機種以上。文字通り説明書いらずのマルチエフェクターと言って良いでしょう。

MOOER GE300 LITE

BOSS GT-1000CORE

GT-1000CORE

先発していたフロア型マルチエフェクターGT1000からエクスプレッションペダルを取り払い、フットスイッチ3つの小さなサイズに収めたもの。幅17cmあまりに920gという小型軽量でありながら、本家GT1000と全く同じプロセッサーを内蔵し、使えるアンプモデル、エフェクトの数、エフェクトチェインの柔軟さなど、一切削られた部分がないという驚異的な製品であり、フットスイッチの数が減っている以外はXLR端子の出力が無いという程度で、可能な限り本家GT-1000を踏襲しようとする設計思想が窺えます。まさに”CORE”という名にふさわしいモデルと言えるでしょう。コンパクトに混ぜて使いたい時や、可能な限り機材を軽量にしたい際には最有力候補となりうる製品であり、競合製品のLINE6 HX STOMPと比較すると、後発であるこちらの方が同時使用エフェクト数という点において大きく上回っていますが、UIを含めた使いやすさには未だにどちらにも長短あるという意見が多く見受けられます。小型最高峰マルチというカテゴリに一石を投じたという意味で、後々にも大きな存在を持つであろうモデルになることは間違いありません。

BOSS GT-1000CORE

ZOOM G6/G11

G11

安価なマルチエフェクターを多数リリースしてきたZOOMが、ハイエンド勢に割り込む形で登場させたシリーズがこの「G11」とそのダウングレード版の「G6」。エフェクトプロセッシングについては同様の技術が用いられ、前シリーズの「G5n」や「G3n」とはかなり異なるデザイン、設計思想で新たに登場してきました。アンプモデルに定番の16種とZOOM独自の6種、キャビネットモデルは22種に加え70のIRデータがプリインストールされている点は「G6」、「G11」に共通する点。大きさと価格を除けば、意外にも内部クオリティに歴然とした差はありませんが、IRローダーは「G6」には120種、「G11」には200種を読み込む事ができ、またルーパーについては「G11」の最長5分に対し「G6」は45秒とかなりの差がついています。

また、マルチエフェクターのグレードの差を如実に表すのが同時使用エフェクト数の差ですが、これらについても例外ではなく、「G6」が7つ、「G11」が9つとなっているため、どちらかを選ぶ場合、この部分がネックとなってくるでしょう。他社のハイエンドマシンに比べて安価に抑えられつつも、サウンド面では互角といって良いほどにハイクオリティを実現したこれらのモデルはさすがにZOOMと言ってよく、「G6」は4万円、「G11」においても8万円を切る価格となっているため、中級クラスのマルチエフェクターを探す際に有力な候補となるでしょう。

ZOOM G6 – 実用性の高いサウンドとスマホ感覚の操作性を備えたマルチエフェクター
ZOOM G11 – ZOOM最高峰のマルチエフェクター

Fractal Audio Systems Axe-Fx III MARK II

Axe-Fx III MARK II

業界最高峰のモデリングアンプ兼マルチエフェクターであるAxe-Fx IIIがマイナーチェンジを施しMk2を名乗って登場。Axe-Fx IIIにおける”Ares”モデリングを使用した膨大なアンプモデルや、2200を超えるIRデータを用いたキャビネットモデル、豊富な入出力や柔軟なルーティングなど、内部のクオリティは全てそのままに、斜めからの視認性を向上させたIPS型カラーディスプレイを新たに搭載、それに伴いカラーと輝度を調整可能とし、プリセット数を512種から1024種へと増大させ、将来のアップデートに備えた内部フラッシュメモリーの増加させるという、はっきりと見えない部分での細やかなアップデートが施されています。

Fractal Audio Systems Axe-Fx III MARK II


マルチエフェクターの高品質化、小型化の流れの脇で、コンパクトエフェクターにおいても小型化の流行がやむ気配はなく、大型機種の小型版が登場する流れは以前からあり、2020年もその流れの中での製品が目立ちます。その代表がNuTubeを使用した製品であり、小型化軽量化を辿るワウペダル類と言えるでしょう。ギター機材におけるこの流れは未だしばらく続くであろうことが予想され、各社の今後の展開にも期待したいですね。