《フェンダーアンプのサウンドを再現》フェンダー系エフェクター特集2019年1月11日

《フェンダーアンプのサウンドを再現》フェンダー系エフェクター特集

ギターアンプの歴史において、フェンダーの存在は計り知れないほど大きなものです。後進に与えた影響では、ギターアンプの世界でもトップに君臨すると言って差し支えないでしょう。昨今、既存の優れたアンプのサウンドをどこでも再現できるように、近い音色、特性、あるいは外観を持たせたエフェクターが増えています。今回はそんな「アンプを模したコンパクトエフェクター」のなかでも、フェンダーアンプに迫ったものを特集しました。

まずはフェンダーアンプの歴史をおさらい

フェンダーアンプ

フェンダーのアンプは1940年代の半ばに生産が始まっており、今に至るまで膨大な数の製品が世に送り出されています。その中でも、これぞフェンダーアンプと言える代表的モデルは、最初期の「Tweed(ツイード)」と言われるモデル達、そしてその後に登場した真っ黒な革張りの「Black Face(ブラックフェイス)」と呼ばれるアンプ群に絞られます。

ツイード期の代表的存在は「59年製Bassman」であり、ツイードフェンダーの最高傑作とされているアンプです。Bassmanはジム・マーシャルがマーシャル初号機を製作する際にも全面的に参考にしており、後のギターアンプに対する影響力も計り知れないものがあります。

そして、ブラックフェイス期に移り変わるにおいて、美しいクリーントーンを軸としたサウンドに刷新されていきます。この時期「Twin」「Deluxe」「Super」など様々な銘機が生み出されました。これはツイード・フェンダーとはまた違う、フェンダーアンプのもう一つの顔となっています。

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フェンダー系エフェクターは、主に2種類

フェンダーアンプのサウンドを再現したエフェクターは、ほぼ「ツイード系」「ブラックフェイス系」どちらかの音の傾向を狙ったものであり、どちらを狙っているのかで大別できます。

ツイード系

フェンダー・ツイード系アンプ

ツイードアンプはフェンダー黎明期に生み出されたアンプ群の総称で、モデルによってやや差はあれど、乾いたサウンドにパンチの効いたドライブ感を感じさせるところが共通しており、歪み感は独特の軋んだような印象的なものです。後述のブラックフェイス期のイメージから「フェンダー=歪まない」というイメージが先行している向きもありますが、この時期のフェンダーアンプはかなりよく歪み、エリック・クラプトンがLaylaで使用したChampなどは、同曲をイメージすると分かる通り、かなり鋭く歪んだ音が得られます。同じツイード期でも特に「59年製Bassman」は飛び抜けた人気の高さを持ち、シグネイチャーエフェクターも数多く開発されています。

ブラックフェイス系

フェンダー・ブラックフェイス系アンプ

ブラックフェイス期のアンプは特に「Twin Reverb」が有名で、現在でもフェンダーアンプのサウンドの一つの指標となっているほどです。透明感と滑らかさを同居させたような美しいクリーントーンは唯一無二の存在感を持ち、ジャズやカントリーなどでも好んで使われます。あまり歪まないアンプとして知られていますが、「Deluxe」などの低出力のモデルだと、ボリュームを上げることで容易に歪みを得ることができ、真空管アンプ特有のサチュレーションの効いたサウンドは、またクリーントーンとは違った魅力があります。

ツイード期Bassmanのサウンドを狙ったペダル

まずはツイードフェンダーを代表する「59年製Bassman」。その音を狙って製作されたモデル達を紹介しましょう。

BOSS FBM-1 Bassman

BOSS FBM-1 Bassman

FBM-1 Bassmanは、Bassmanの中でも最も評価の高い59年製のものをローランドの誇るCOSMで再現し、コンパクトエフェクターのサイズに詰め込んだ、ある意味で特殊なペダルです。通常のエフェクターではなくシミュレーターに近い存在ですが、それだけに本物に近いサウンドを得ることができ、どのようなアンプと合わせてもツイードフェンダーに近い特性の音が得られます。オリジナルのアンプと同じく、ノーマル、ブライトの二種のインプットがあり、BRIGHT INはその名の通り高域を強調したサウンドを得られるので、細やかなEQとも合わせて、調整幅もかなりのものです。
BOSS FBM-1 Bassman

Z.VEX ’59 Vertical Sound

Zvex 59 SOUND VERTICAL

’59 Vertical Soundは、59年製Bassmanを再現したエフェクター。他のモデルがプリアンプ的な使い方もできるものが多い中、こちらは通常のエフェクターのような使用感のもので、アンプのボリュームを上げたような、ナチュラルなドライブサウンドが得られるようになっています。自然でありながらやや尖った部分を感じさせる歪みの質感は、まさにツイード期のフェンダーアンプを彷彿させるもので、元のアンプの音を最大限ブラッシュアップしてくれます。クリーンブースト回路が別途搭載されていますが、ドライブ部との併用だけでなく単独での使用も可能であり、作れる音色幅の広さも魅力です。
Zvex ’59 SOUND VERTICAL

Catalinbread Formula 5F6

Catalinbread Formula 5F6

Formula 5F6は、真空管の大きなイラストが描かれたルックスが印象的なカタリンブレッドのエフェクター。狙った音はツイード期のBassmanであり、3種のEQと内部トリマーにセットされたプレゼンスコントロールは、オリジナルとほぼ同じ働きをするように作られています。クリーンのアンプに繋ぐことで、Bassmanのサウンドを得られるように作られており、これ自体をアンプと見立ててボードを組むことが推奨されています。内部のスイッチは「もしマーシャルがこの世になかったら」という発想で作られたハイゲイン用スイッチとなっており、Bassmanの音質を保ったままゲインアップが図れるという、ユニークなモード切替が行えます。
Catalinbread Formula 5F6

ツイードアンプ(Bassman以外)のサウンドを狙ったペダル

続いて、Bassman以外のツイードアンプを狙って製作されたモデルです。「Twin」か「Deluxe」のどちらかがモチーフになっているものが多く見られます。

Flying Teapot Deluxe Preamp

Flying Teapot Deluxe Preamp

Deluxe Preampは、トーレックスを貼った見た目からも丸分かりな通り、ツイード期のフェンダーアンプを再現したプリアンプペダル。名前に「Deluxe」と付いていますが、Deluxeを意識したわけではなく、広義の意味でツイードフェンダーのイメージを詰め込んだペダルという立ち位置になっています。プリアンプとして使えば、かなりフェンダーライクなサウンドをそのまま得ることができ、また、通常のエフェクターのように歪みペダルとして使うこともできます。細かなEQを配さず、あえてFATコントロール一つとすることで直感的な操作が可能。オールドアンプを触るような感覚でサウンドを作っていけます。
Flying Teapot Deluxe Preamp

Mad Professor Big Tweedy Drive

Mad Professor Big Tweedy Drive

Big Tweedy Driveは、フィンランドのMad Professorが、ツイード期Twinのサウンドを狙ったエフェクターとして開発したエフェクター。アンプそのものに遜色のないコンプ感と歪み感を生み出し、12インチx2という大型コンボらしいふくよかなミッドレンジを得ることができます。このペダルをベーシックな位置におき、アンプのようにして使うセッティングのほか、既に歪んでいるアンプへのブースターとしても機能します。
Mad Professor Big Tweedy Drive

Mad Professor Little Tweedy Drive

Mad Professor Little Tweedy Drive

Little Tweedy Driveは、同じくMad Professorのツイードアンプを意識したモデルですが、”Little”と冠されたこちらはDeluxeのサウンドを狙ったもの。12インチx2のTwinが40W出力であるのに比べ、12インチx1のDeluxeは出力12Wと低く、ミッドレンジはTwinほど強力ではないものの、よりナチュラルに歪んだ音が得られるのがポイント。その辺りのサイズ感をもシミュレートしており、欲しい音に応じて使い分けることもできます。どちらのモデルもピッキングの強弱やギター側ボリュームにはアンプ並みに敏感に追従し、ヴィンテージトーンを得るための最短の選択肢となりそうです。
Mad Professor Little Tweedy Drive

Catalinbread Formula No.55

Catalinbread Formula No.55

Formula No.55は、55年に設計された「5e3」回路のツイード期Deluxeを緻密に再現したペダル。当時のプリアンプ部をディスクリート回路で置き換え、トーン、ボリューム周りの設計はオリジナルを元として作られています。ピッキングの強弱にも極めて明瞭に追従し、ギターのボリュームを操作することでクリーン、クランチまで自在に操ることができます。オリジナルと同じくToneコントロールを一つ装備しますが、効きは非常に良く、ジャズっぽい滑らかなクリーンから、ピーキーなサウンドまでをカバーできます。中心にあるモードスイッチでは通常のLOモードに加え、真空管をハイゲインなモデルに交換したような効果が得られるHIモードを選ぶことができます。
Catalinbread Formula No.55

Umbrella Company Hitchhike Drive

Umbrella Company Hitchhike Drive

Hitchhike Driveは、Empressなどの代理店を担うUmbrella Companyの自社製エフェクター第一号で、ツイード期のDeluxeやTwinのサウンドを狙ったペダル。ツイード期のアンプにおける飽和した感覚をよく掴んでおり、Saturateコントロールのオンオフによって高域のコンプ感をさらに強く制御することができます。Deluxeを狙ったDモードでは中域が押し出されたようなコンパクトな音色、Twinを彷彿させるTモードでは箱鳴り感を意識した大きめのサウンド、Bモードではそこからさらに中低域のゲインが上がる感があり、三つのモードともがアンプらしさを損なわずに幅広いサウンド作りに使え、様々なシチュエーションに対応できます。
Umbrella Company Hitchhike Drive

JOYO American Sound

JOYO American Sound

American Soundは、57年製Deluxeを基準として近い音が出せるように作られたJOYOのペダル。明るめで思ったより良く歪むその音色は、十分に実戦で使えるもの。音色のエッジ感を調整できるVOICEコントロール、そしてEQ、レベル、ゲインを含めた6つのコントロールで作られる音色幅はかなり広く、他の歪みエフェクターとの相性も抜群。JOYO製だけあってその低価格は驚くべきもので、試しに一台という感じで軽く購入できます。
JOYO American Sound

ブラックフェイス期のアンプサウンドを狙ったペダル

ヘッドルームの大きいブラックフェイス期のフェンダーアンプを狙って製作されているモデル。いずれもチューブアンプらしい暖かさと美しさを同居させたクリーントーン、じわっと歪んでくる質感を再現しています。

One Control Sonic Blue Twanger

One Control Sonic Blue Twanger

Sonic Blue Twangerは、ブラックフェイス期のTwin、Deluxe、Superなどを参考にして、それらと同じような音が得られるように作られたペダル。美しいクリーントーンから、ボリュームアップによりアンプがドライブしていく過程の部分も本物と遜色ないよう緻密に作られています。トランジスタアンプの前段にアンプ代わりとして常時オンで繋いでおくことで、実際のフェンダーアンプを使っているかのような煌びやかなトーンが得られます。これだけの質でありながら値段が安く、同社の他のエフェクターと同じく、小さなサイズに収められているのも使いやすいポイント。
One Control Sonic Blue Twanger

FREE THE TONE SS-1V STRING SLINGER

FREE THE TONE SS-1V STRING SLINGER

SS-1V STRING SLINGERは、ブラックフェイス期のDeluxeなどに見られるジューシーな歪みをその内部に宿したFREE THE TONE気鋭のエフェクター。ノブや筐体の形、サイズに至るまで最終的な音色を意識して削り出しで製作されており、その音に対する並々ならぬこだわりが感じられます。レベル、ゲインとトーンというシンプルなコントロールながら、その音色はすごいの一言で、どこに向けてセッティングしてももっとも素晴らしいフェンダーアンプの音色が飛び出してきます。
FREE THE TONE SS-1V STRING SLINGER

Tech21 Sansamp Blonde

Tech21 Sansamp Blonde

Sansamp Blondeは、Tech21の代表製品「サンズアンプ」のフェンダー・シグネイチャーバージョン。サウンドはブラックフェイス系によく聴かれるジューシーなクリーンから、ツイード系にあるパンチの効いた歪みまでをカバーします。カバーする範囲が広い分、個々のサウンドに重きを置いたモデルには一歩及ばないと感じさせる部分もありますが、どのアンプに繋いでもそれなりのフェンダーらしい音にしてくれるので、一台あると非常に重宝すること間違いありません。サンズアンプを冠しているだけあって、プリアンプとして使うこともでき、エフェクトリターンやミキサーに直接入力することもできます。
Tech21 Sansamp Blonde

本家フェンダーが放つ歪みエフェクター

2018年初頭に登場したフェンダーのエフェクター達。さすがに本家本元の矜持を感じるクオリティに仕上がっています。ここでは歪み系を中心にセレクトし、紹介していきます。

Fender Santa Ana Overdrive

Fender Santa Ana Overdrive

Santa Ana Overdriveは、真空管アンプの持つサチュレーションを可能な限り再現したフェンダーのエフェクター。オーバードライブは2モードを搭載し、EQは4バンド、ブースト機能付きのツインペダル仕様で、設定がかなり幅広くできますが、どこに動かしても使える音が得られ、自分なりのベストなセッティングを探すのが楽しくなるペダルです。アンプのように自然に歪み、ボリュームへの追従性も優れており、アンプの代わりとして運用してもなんら違和感はない出色の出来です。剛性を感じるアルマイト製の筐体、アクセスしやすいマグネット型の電池ボックス、LED付きのコントロールなど、ユーザーフレンドリーなところは好印象で、この部分においては以下のフェンダー製ペダルの全てに同じデザインが施されています。
Fender Santa Ana Overdrive

Fender Full Moon Distortion

Fender Full Moon Distortion

Full Moon Distortionは、上記のSanta Ana Overdriveと双璧をなすディストーション。コントロール周りの仕様はよく似ており、EQは4バンド、ブーストスイッチを装備。Textureという独自のコントロールは、対称、非対称クリッピングを切り替えることができ、音のせり出し感を変えることができます。Biteスイッチでは高域のハーモニクス感を制御、EQの一部をなすHi-Trebleはローパスフィルターに近い働きをし、ヌケ感をコントロールできます。ハイゲインディストーションと銘打たれていますが、歪み方はレンジが広く品の良いもので、メタルなどにまで使えるかは微妙なところ。ハードロックのリフなどには最適で、非常に気持ち良く弾けるはずです。
Fender Full Moon Distortion

Fender Pugilist Distortion

Fender Pugilist Distortion

Pugilist Distortionは、違うスタイルのディストーションを内部に二つ搭載し、それを混ぜることができるという、他にあまり見ないタイプのペダル。タイプAはローゲインで明るい音色、タイプBは暗めの音色でハイゲインになっており、これらをBlendコントロールで混ぜて使用できます。ハイゲインでありながらアタック感のある明瞭な部分を残したり、2種類のペダルをパラレルでミックスして使うのと同じようなユニークな音色が得られますが、どちらかのタイプを単一で使うこともできます。タイプAはクリーンブースター並のローゲインでも使え、使用用途の幅広さも魅力です。
Fender Pugilist Distortion

Fender The Pelt Fuzz

Fender The Pelt Fuzz

The Pelt Fuzzは、60年代のオールドファズをイメージして作られたファズペダル。いわゆるファズっぽいシャリシャリした音はもちろん、音の輪郭を制御するBloomコントロールをうまく使えば、リードギターなどの時にもピッキングのアタック感を損なわずに演奏出来ます。その他、Midスイッチでは中域、Thickスイッチでは低域をブーストでき、轟音系のサウンドを得ることも簡単。ギターのボリュームなどへの追従性も高く、オールドファズの良い部分と、現代風の使い勝手をうまく合わせたようなおいしいペダルに仕上がっています。
Fender The Pelt Fuzz


フェンダーはストラトキャスターテレキャスターのイメージが強いブランドですが、前身であるK&Fマニュファクチュアリングはアンプの製作、修理をメインとする会社でした。それだけにアンプは大変強いこだわりをもって製作されており、魅力的なサウンドはその何よりの証明です。実際のアンプを導入するのは鳴らす環境や運搬の問題もあり、容易くはありませんが、足下のエフェクターであれば容易に試してみることもできるでしょう。スタジオのトランジスタアンプを歴史的銘機に変えてくれる、魅力的なエフェクターを試してみてはいかがでしょうか。

最終更新日 : 2019/01/25