マーシャル系歪みエフェクター特集2022年2月16日

マーシャル系歪みエフェクター特集

ダンブル系、フェンダー系、トランスペアレント系……、○○系ドライブペダルという括りでは昨今様々な種類のものが登場していますが、そんな中、今回はマーシャル系を特集。ブリティッシュアンプの雄、マーシャルは、ロックサウンドからは切っても切り離せない存在であるがゆえに、それをシミュレートしたペダルも百花繚乱の体をなしています。ここでは本家マーシャルのペダルを筆頭に、様々なブランドの銘エフェクターを並べてみました。

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1: 本家マーシャルのペダル 1.1: 古くはマーシャル・ガバナー 1.2: Guv’nor Plus 1.3: Bluesbreaker II 1.4: Jackhammer JH-1 2: マーシャルアンプの歴史とサウンドの変遷 2.1: JTM45からプレキシ1959 2.2: JCM800とJCM2000 3: 他社ブランドのマーシャル系ペダル 3.1: BOSS Power Stack ST-2 3.2: Xotic SL Drive 3.3: ZVEX BOX OF ROCK 3.4: Alexander Pedals Jubilee Silver Overdrive 3.5: Pedal Tank Plexi Drive 3.6: CARL MARTIN「Plexi Tone / Plexi TOne Single Channel」 3.7: Lovepedal Kalamazoo 3.8: JHS Pedals 3モデル 3.9: Wampler Pedals 3モデル 3.10 Bogner 2モデル 3.11: VEMURAM 2モデル 3.12: WEEHBO Effekte 4モデル 3.13: Gurus Amp 1959 Double Decker 3.14: Flying Teapot 59 pre amp 3.15: SHINOS Naughty Brain 3.16: Blackberry JAM Rosemary Rex 3.17: FREE THE TONE FM-1V FIRE MIST

本家マーシャルのペダル

古くはマーシャル・ガバナー

マーシャルはロックギター界のアンプの歴史を作り上げてきたアンプメーカーですが、その歴史の中ではエフェクターもいくつかリリースしています。そんなマーシャル製ペダルと聞いて真っ先に思い浮かぶのは、大抵の人はこれでしょう。Guv’nor(親父、おかしら)と銘打たれたこの品は、黒ずんだ大きめの筐体に目立つ”Marshall”のロゴが書いてあり、楽器店などで中古を見たことがある方も多いと思います。

音色はブリティッシュアンプらしいウェット感を残しながら、JCM800系のジャキジャキした粗い歪みを実現したもの。さらに3バンドEQの音作り幅は劇的な広さを持ち、アンプをもう一台増やしたと言えるほどの存在感を示します。80年代に発売されてのち、モデルチェンジを経て今なお人気を保ち続けているのも、うなずける完成度の高さを実現していました。

この黒い初代ガバナーには初期型の英国(イングランド)製と、リイシュー型の韓国製とがあります。一見すると同じ外見ではありますが、裏面に貼ってある銀色のシールの説明文を読むほか、電池蓋のネジの種類(マイナスが英国、プラスが韓国)で判別できます。

英国製の方が音が太い、韓国製がよく歪む等、違いについて色々と説はありますが、公式にはその差は語られていません。

Marshall The Guv’nor

Guv’nor Plus

オリジナルのGov’norが販売終了したあとに、その後を引き継ぐ形で登場したのが、このGov’nor Plus。つまみに2段のものを搭載することでよりコンパクトな筐体になった上、原版にはなかった、DEEPというJCM2000譲りのコントロールが増えました。DEEPは広めの中低域をコントロールするつまみで、より柔軟なセッティングが可能に。プラスと冠している意味はこの辺りにあるのでしょう。

Guv’nor Plus

Bluesbreaker II

エリック・クラプトンが在籍したジョン・メイオール&ザ・ブルースブレイカーズの使用により、「Blues Breaker」のあだ名で呼ばれた銘アンプ「1962」、そのサウンドを意識して再現を試みたのがこのペダルです。初代ガバナーと同じ筐体で発売されたIを引き継ぐ形で、IIが登場しました。ボリューム、トーン、ドライブの主要コントロールに加えて、BOOST、BLUESの二種を選択するモードセレクトを搭載。BOOSTはその名の通り、よりゲインをアップさせ、パンチを効かせた音を出し、BLUESはオリジナルの1962や1959に迫った、図太く粘っこいヴィンテージトーンを創出します。

Bluesbreaker II

Jackhammer JH-1

本家マーシャルが送る、史上最大のハイゲインペダル。ひときわ粗い歪みが特徴で、ゲイン、ボリューム、トレブル、ベースに加え、ContourとFrequencyを付けることで、中域をより綿密に調整できるように。モードをオーバードライブ、ディストーションの二つから選べるので、ブルース系の軽く歪んだクランチ系の音からドンシャリのメタル系ハードディストーションまでを一台でカバーできます。Gov’nor、BluesbreakerがそれぞれJCM800、1962を意識したものとするならば、JH-1はJCM2000に一番近いモデルと言えます。

Jackhammer JH-1

マーシャルアンプの歴史とサウンドの変遷

マーシャルアンプはその発売された時期や時代背景により少しずつ違うサウンドになっており、一言にマーシャル系エフェクターと言っても、そのどこに狙いを付けるかでサウンドの傾向が変わってきます。その違いを明確に知るには、一度マーシャルの歴史的なサウンドの変遷に目を向けておくのが良いでしょう。

《今振り返る》マーシャルアンプの系譜 – Supernice!ギターアンプ

JTM45からプレキシ1959

元々マーシャルアンプは、1960年代初頭に楽器店を経営していたジム・マーシャルと、そこで楽器の修理に携わっていたケン・ブランが、フェンダーの「Bassman」を参考にして作り上げた独自のモデル「JTM45」というアンプに端を発しています。1965年、The Whoのピート・タウンゼンドから巨大な会場でも十分に音量が得られる、大音量モデルの制作依頼を受けた彼らは、そのJTM45をベースとして大音量の100Wモデルを開発しました。これが後に「1959 Super Lead 100」と名付けられ、歴史に名を残すモデルになるのです。

「1959 Super Lead 100」は1966年頃から製作を開始しますが、特に67年頃までの最初期のモデルは、基板がハンドワイアードによるポイントトゥポイント配線で、パネルの材質がアクリル(Plexiglass)で出来ていたため、プレキシモデルと言われます。現在ではオリジナルは伝説的なモデルとして、凄まじいプレミア値が付く稀少品。エディ・ヴァン・ヘイレンがこのモデルに改造を施して創出した劇的なハイゲインサウンドは「ブラウンサウンド」と言われ、プレキシ人気にさらに拍車を掛けた一因ともなりました。現在、一般的にエフェクターやモデリングアンプなどで「プレキシ」といった場合、この頃のモデルの「1959」を指しています。

JCM800とJCM2000

1981年、マーシャル社はアメリカ進出を視野に入れ、JCM800 [モデル名:2203(100w)・2204(50w)]を発表。このモデルは、これまでに発売されていた1959や1967等に比べるとゲインが上がっており、80年代から全盛期を迎えるハードロックのギターサウンドの一翼を担うことで、現在のマーシャルサウンドのイメージを決定づける製品となりました。その後、2チャンネル仕様でさらにゲインアップを図ったJCM900が90年代に先駆けて発表されます。

その後、JCM2000が2000年直前に発表されました。2チャンネル仕様、3チャンネル仕様の2種類があり、現代のニーズに応えたハイゲイン、クリーン、クランチを使い分けられる3チャンネルのものは、昨今全国のスタジオでも定番となっています。

他社ブランドのマーシャル系ペダル

上で見てきたとおり、マーシャルと一口に言ってもそのサウンドは多様。同じく市場に出回るマーシャル系エフェクターも多様性に富んでいます。ヴィンテージプレキシや、エディがそれを元に作り出したブラウンサウンド、JCM800やJCM2000など、それぞれどのマーシャルアンプに狙いを付けたサウンドなのか理解できれば、自分が求めているマーシャルアンプのサウンドに近づくことができるでしょう。

BOSS Power Stack ST-2

コンパクトエフェクターの雄、BOSSが送るマーシャル系エフェクター「Power Stack ST-2」。名前の通り、ヴィンテージのマーシャル・スタックアンプを意識した作りになっています。公式に明記されてはいませんが、明らかにマーシャル系のジャキッとした音色です。コントロールにはトレブルとベースだけで、ミドルがありませんが、歪ませれば歪ませるほどドンシャリに近い感じの音になっていくのも一つの特徴。ゲイン幅は一口にヴィンテージとも言えない広さを持ち、ハムバッカーであればメタルが可能なほどです。

BOSS Power Stack ST-2

Xotic SL Drive

Xoticのこのエフェクターはオリジナルの「1959 Super Lead 100」に狙いを定めて作られたもので、SL DriveのSLはその名前に由来します。オリジナルの1959が意外にそうであるように、ゲイン幅も必要十分な広さをもっており、良い意味でXoticらしからぬ荒々しいサウンドが得られ、クランチからディストーションまで、どのようにセッティングしても気持ちの良い歪みを生み出してくれます。小さい筐体に工夫して搭載されたコントロールは3つと少ないですが、背面カバーを開けたところに見えるミニスイッチでサウンドの微調整を可能にし、サウンドバリエーションの広さを補っています。エフェクターボードに敷き詰めるスタイルのギタリストには、この小ささでこのサウンドは唯一無二の存在。非常に魅力的でしょう。

Xotic SL Drive

ZVEX BOX OF ROCK

BOX OF ROCKは、マーシャルアンプ初号機「JTM45」のサウンドを目指して作られたペダル。オリジナルのJTM45は未だハイゲインが必要とされず、そもそもそんなに歪むアンプがなかった時代のもの。そこを狙って作られたこのペダルも、当然ゲイン幅は狭いです。しかし、その粘っこいアンプっぽさは、弾いていて気持ちの良い素晴らしいサウンドで、オールドスクールなブルースロックやコードのかき鳴らしには最適な極上のクランチトーンを提供してくれます。内蔵のブースターは、同社の銘機「Super Hard On」と同じ回路。そう聞くと、ますますこれ一つでも手に入れる価値のあるペダルです。

ZVEX BOX OF ROCK

Alexander Pedals Jubilee Silver Overdrive

Jubilee Silver Overdrive

ガンズ・アンド・ローゼズのスラッシュ氏やレッド・ホット・チリ・ペッパーズのジョン・フルシアンテ氏など、1987年に登場して以降名だたるギタリストたちに愛されてきたMarshall Silver Jubileeのサウンドにインスピレーションを受けて製作されたのが、Alexander Pedalsの「Jubilee Silver Overdrive」。「DRIVE」と「LOUDNESS(ボリューム)」、3バンドEQのコントロールを有しており、実機のアンプに近い感覚でサウンドメイクを行うことができるのは魅力的。過去に日本のディーラー向けに少数生産されたのみのモデルでしたが近年復活し、新たにリレー式のスイッチングが採用されています。小音量での演奏はもちろんのこと、大音量のチューブアンプに接続した際のサウンドは実機のSilver Jubileeに肉薄するリアルさです。

Alexander Pedals Jubilee Silver Overdrive