フロアタイプ・プリアンプ特集2022年1月18日

フロアタイプ・プリアンプ特集

意気込んでエフェクターボードを持ち込み、いざスタジオでセッティング!という時になって、常設アンプの状態の悪さに、全く望んだ音が作れずにイライラ。
このような経験は誰しもあるのではないでしょうか。
いくらギターとエフェクターが良くても、肝心のアンプがダメでは話にならず、貸しスタジオでは、常設アンプの状態までは自分でコントロールできません。
また、自分の好きな傾向の音と全く違う音のアンプしか置いていないということもありえます。

そんなときに、エフェクターボードに忍ばせておくと安心なのが、フロアタイプのプリアンプ。
最近では持ち運びしやすい小型アンプヘッドも増えていますが、ほとんどのモデルで通常のロックバンドのリハーサルには出力が足りません。
プリアンプだけであれば、足下に置けるほどに小型化も図れますし、アンプのリターン端子に接続すれば、どんな環境でも常に近い傾向の音を出していくことができます。
もちろん、スピーカーやパワーアンプが依然として自分のコントロールから離れているため、完全に望みの音を出すほどには至りませんが、自分の好きな音色からかけ離れるとか、全く使えない音になるなどのリスクは減らすことができます。

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プリアンプとパワーアンプについて

ギターアンプはプリ部とパワー部の2箇所から成り立っており、プリ部は主に音を作り込む場所、パワー部はそれを増幅する場所です。
もともと昔のギターアンプはオーディオ用アンプの延長だったため、歪ませるということは考えられずに設計されていました。
ところが、音量を最大近くまで上げ、内蔵の真空管に負担を掛けると、入力されたギターの音がレベルオーバーによるクリップを起こし、歪んできます。
その音を発見した世のギタリストたちは、このかっこいい音をこぞって使い始め、それは瞬く間にエレクトリックギター界に広まっていきました。

これこそがオーバードライブ、ディストーションのはじまりですが、このやり方では常にアンプの音量を最大近くまで上げておかねば歪みを得られないということになります。
それではやはり使いにくいということで、その後、プリアンプ部で歪みも制御できるような設計が広まりました。
現在ではプリ部でほぼ音作りを完了させ、パワー部は増幅に使用するという使い方がもっぱら一般的です。
もちろん、昔ながらのパワー部で作る滑らかな歪みにこだわるギタリストは数多く、いまだフルチューブアンプが人気を誇るところからも分かるとおり、パワーアンプが音に及ぼす影響は小さくありません。
しかし、ギターアンプ黎明期と比べると、その音色部分に果たす役割ははるかに小さくなっていると言えるでしょう。

プリアンプの使い方

一般的なスタックアンプのアンプヘッドにはプリアンプとパワーアンプが両方入っています。
そして、空間系のエフェクトを設置するためのSend-Return端子はちょうどその間に挟まれるように入っています。

プリ部分を自分の機材に組み入れてしまうと、音作りの大部分を自分の機材だけで完結でき、常にある程度安定した音質を得ることができるようになります。
スタジオやライブで備え付けのアンプに繋ぐ場合、プリアンプをスルーして直接パワーアンプに入力するために、Send-Return端子のReturn部分に繋ぐという接続法が一般的です。

普通のエフェクターのように、アンプのインプット端子に直接入力しても音は問題なく出ますが、そのプリアンプのポテンシャルが発揮できない場合があります。
また、ものによっては、アンプのインプットに挿す場合とリターン端子に挿す場合と、セッティングで両方使えるようになっているものもあります。


プリアンプにはラック型も数多くありますし、あるいはPODなどのシミュレーターもその範疇に入ると思われますが、今回は足下にエフェクターのように設置できるフロアタイプに絞って特集します。
また現在では超小型のパワーアンプもいくつか出回っていますので、それもわずかながら紹介しています。

フロアタイプ・プリアンプ特集

現在、手に入れやすいフロアタイプ・プリアンプをセレクトしてみました。
サウンドキャラクターもサイズも機能も様々です。
エフェクターメーカーよりはアンプメーカーから数多く出されているイメージで、ここではメーカー毎に分けて紹介しています。

MOOER Micro Preamp シリーズ

MOOER Micro Preamp シリーズ

MOOER「Micro Preamp」シリーズは、ミニサイズのコンパクトなボディに古今東西の様々なアンプサウンドをモデリングしたプリアンプシリーズ。
これまで15種類がリリースされており、それぞれ

  • MICRO PREAMP 001:Diezel Hagen
  • MICRO PREAMP 002:Marhsall JCM900
  • MICRO PREAMP 003:Koch Power Tone
  • MICRO PREAMP 004VOX AC30系モデリング
  • MICRO PREAMP 005:EVH5150
  • MICRO PREAMP 006:Fender Blues deluxe
  • MICRO PREAMP 007:ToneKing Falcon
  • MICRO PREAMP 008:Mesa Boogie MKII
  • MICRO PREAMP 009:Engl Blackmore
  • MICRO PREAMP 010:TwoRock Coral
  • MICRO PREAMP 011:Mesa Bogie Dual Rectifier
  • MICRO PREAMP 012:FRIEDMAN BE-100
  • MICRO PREAMP 013:MATCHLESS DC-30
  • MICRO PREAMP 014:Suhr Badger
  • MICRO PREAMP 015:Peavey 5150 MKI

と、ヴィンテージ・コンボ〜モダン・ハイゲインまで、様々なアンプサウンドがモデリングされています。
いずれのモデルもミニサイズながら3バンドEQを含む6つの操作系統でしっかりと音作りができるのも特徴となっています。
プリアンプとしては比較的リーズナブルなので、狙っているアンプサウンドが明確な人は一度チェックしてみるのもいいでしょう。

MOOER Micro Preamp シリーズ

また、MOOERからは、上述のプリアンプを含む全55種類のアンプサウンド/モデリングエフェクト70種類を搭載したマルチエフェクター「GE200」、25種類のアンプモデル/20種類のキャビネットモデル/20種類のエフェクトを搭載したコンパクトなアンプヘッド「Little Tank D15」がリリースされています。
特にGE200については高い人気を集めていますので、MOOERのプリアンプが気になる人はチェックしてみて下さい。

Mooer Preamp Live

Mooer Preamp Live

MOOERのミニサイズ・プリアンプ・ペダル「Micro Preamp」シリーズ12機種をプリセットとして搭載した、マルチ・プリアンプ・モデラーです。
Diezel、Marhsall、fender、Friedman、EVH、Two Rock、Mesa Boogieなど名だたるブランドのサウンドがこの一台に詰め込まれており、実機のアンプのような横並びのコントロールによって、直感的なサウンドメイクが可能です。
また、PC用のソフトウェアやiOSアプリを使用することによって、これらに加えて50種類のプリアンプ・モデルを追加することができます。
さらにKEMPERのようなTONE CAPTURE機能にも対応しており、自らの所有するアンプの特性をキャプシャーし、本機で呼び出して使用することが可能です。
FXループやON/OFF切り替え可能なキャビネット・シミュレートも搭載しており、汎用性の高い一台です。

Mooer Preamp Live

Diezel「VH4 PEDAL」「VH4-2 Pedal」「Zerrer」

Diezel VH4 PEDAL

メサブギーと並び、ウルトラハイゲインアンプの代表格であるDiezelのプリアンプ。
VH4 PEDAL」「VH4-2 Pedal」は、いずれもDiezelの代表的なアンプヘッド「VH4」の凶悪な歪みを生み出すディストーション・チャンネルを再現したモデルで、「VH4 PEDAL」がチャンネル3と同様のプリアンプ構成、「VH4-2 Pedal」がチャンネル3, 4の2チャンネル仕様で、フットスイッチによる切替が可能なモデルです。
現在は2チャンネル仕様の「VH4-2 Pedal」が現行モデルとなっています。


Diezel VH4-2 PEDAL, Herbert PEDAL を弾いてみた!

Zerrer」は15個のツマミと2つのフットスイッチ、10系統の接続端子を装備し、プリアンプヘッドとしても利用できるハイエンドモデルです。

Diezel VH4 PEDAL
Diezel VH4-2 Pedal
Diezel Zerrer

VOX VALVENERGY シリーズ

VOX VALVENERGY

2015年にKORGとノリタケ伊勢電子の共同開発によって誕生した新型真空管「Nutube」を採用したプリアンプ・シリーズです。
従来の真空管はサイズが大きくメンテナンスにも気を遣うものでしたが、Nutubeは超小型であることに加えて長寿命ということもあり、まさにペダルにうってつけのマテリアルといえます。
この「VALVENERGY」シリーズではダンブル、マーシャル、VOX、5150など多種多様なアンプをモチーフとしたペダルがリリースされており、どの機種もチューブらしいタッチレスポンス、ダイナミクスが発揮されたサウンドを出力します。

特にVOX AC30のサウンドを再現する「MYSTIC EDGE」、ダンブルアンプのサウンドを再現する「SILK DRIVE」は高い評価を得ています。
さらに現在では、ブースターの「Power Burst」、チューブ・コンプの「Smooth Impact」、オーバードライブの「Fuel Injector」、グラフィックEQの「Tone Sculptor」といった、Nutubeを活かした第2世代のラインナップも加わっています。

VOX VALVENERGY MYSTIC EDGE
VOX VALVENERGY SILK DRIVE

TC Electronic「JIMS 800 PREAMP」「DUAL WRECK PREAMP」

TC Electronic JIMS 800 PREAMP

ギターアンプの名機をペダルサイズで再現するTC Electronicの「Ampworx」シリーズには、フロアタイプ・プリアンプとして使える2機種がラインナップされています。
いずれも独自のコンポーネント・モデリングによってチューブアンプの挙動を再現しており、専用のキャビネット・シミュレーターIRを内蔵したヘッドフォン/DIアウトを備えているため、ライブやリハーサルだけでなく自宅録音にもそのまま対応します。

「JIMS 800 PREAMP」は、Marshall JCM800を彷彿とさせるブリティッシュ・ハイゲインを再現したモデルです。
GAIN/BASS/MID/TREBLE/LEVELに加えてBOOSTノブを備え、フットスイッチでチャンネルとブーストを切り替えられる2チャンネル仕様となっています。
背面にはマスターPresenceコントロールを備え、ヘッドフォン出力にはCelestion G12-65を積んだ4×12キャビネットのIRが組み込まれています。

TC Electronic DUAL WRECK PREAMP

「DUAL WRECK PREAMP」は、90年代のメタルやグランジを象徴したMesa/Boogie Dual Rectifierのサウンドを再現したモデルです。
クリーン〜クランチのチャンネルと、タイトでアグレッシブなハイゲインチャンネルの2チャンネル仕様で、低域の締まりを調整するTIGHTコントロールや背面のPresenceを備えています。
こちらもCelestion V30を積んだ4×12キャビネットのIRを内蔵し、DI出力やヘッドフォン出力からそのまま録音やPA送りが可能です。

TC Electronic JIMS 800 PREAMP
TC Electronic DUAL WRECK PREAMP

Koch「63’OD」

Koch 63’OD

おなじくKochの比較的新しいモデル。
真空管を1本搭載、2チャンネル仕様で、ブースト付。上記のPedaltoneが大きすぎると言われたのか、こちらはかなり小型のモデルとなっており、通常のエフェクター2台分ほどのサイズです。
63’ODの方は昔のFenderアンプに狙いを付けたオールドなドライブサウンドで、ハイゲイン系が多いこの手の製品の中では珍しい立ち位置です。
ちなみにこのモデルは拡張性が非常に高く、9vエフェクターへの電源供給機能、プリ・ポスト両系統で使えるFXループ、外部フットスイッチ対応、キャビネットエミュレーターを装備し、XLR端子を使いそのまま繋いでPA出力や録音も可能。
エフェクターボードの頭脳として活躍するでしょう。

Koch 63’OD

Koch「Superlead」

Koch Superlead

上記のOD’63と同じコンセプトの製品ですが、Superleadは広いゲイン幅を持つモダンな音色のモデルです。
クリーンとドライブの2チャンネル仕様に、ブースト機能付き。音色以外の機能はOD’63と全く同じため、その拡張性も同じです。
自分のプレイスタイルによって選び分けるとよいでしょう。

Koch Super Lead

ALBIT「A3GP MARK II PLUS」

ALBIT「A3GP MARK II PLUS」

安価で小型軽量のなかに真空管搭載でねばっこいトーンを実現したプリアンプ。
2チャンネル仕様で、Drive側はCrunch/Leadをスイッチで切り替えられます。
CROSSというつまみでは、Fender系~Marshall系とサウンドキャラクターを可変可能。
ドライブトーンにクリーントーンが常に混ざるという独特のシステムを採用しており、自在に設定するにはやや慣れが必要ですが、そのクリーントーンの評価は非常に高いです。
通常のエフェクター並みのサイズ内にTuner Out、FX Loopを備える上、Sendのレベルまで設定できるというこだわりぶり。
Aux Inまであるので、ヘッドホンを使っての夜間練習も手軽に出来ます。

ALBIT A3GP MARKII

AMT Electronics「SS-20」

AMT Electronics「SS-20」

こちらは真空管1本搭載、2チャンネル仕様のプリアンプで、AMTの代表的モデル。
AMTはもともとAsiaという名で電子楽器部品を製造していたロシアのメーカーで、現在はAMTと名を変え、ギター用のエフェクターや小型のプリアンプなどを多数製造しています。
クリーン、ドライブの切替と、ドライブはクランチとリードの2種類を切り替えられます。
プリ管を最大限に生かすため、内部で入力電圧を250Vへと昇圧させており、スムーズなドライブトーンが得られます。
FXループを備え、キャビネットエミュレーターも装備しているので、直接の録音やPAへの入力が可能。
ハイゲイン系のプリアンプとして非常に高品質で、拡張性も抜群です。

AMT Electronics「SS-11」

AMT Electronics「SS-11」

上記SS-20の原型となった一台。
こちらはプリ管を2本搭載。
2チャンネル仕様ですが、クリーンにBrightスイッチ、ドライブにTone Shiftスイッチが付いており、より幅広く細かい音作りが可能です。
SS-20とは違い、キャビネットエミュレーターは付いていないようですが、歪みのサウンドセッティングがより細かく出来るのは魅力。
現在ではClassic系の「SS-11A」とModern系の「SS-11B」の2タイプに分かれて展開されています。

AMT Electronics「SS-30 BULAVA」

こちらは上記2種と違い、真空管非搭載モデル。
クリーン、クランチ、リードと3チャンネル仕様で、それぞれ独立したレベルとゲインを使ってセッティングできます。
FXループは言うまでもなく、キャビネットエミュレーター、MIDI機器との連動も可能と、拡張性は抜群。
さらに電池で駆動も可能と、真空管を搭載していないがゆえのメリットを最大限に感じられる仕様となっています。

AMTには上記に記載した3種の他に、普通のエフェクターとほぼ同サイズのプリアンプ、「●-2」という名のシリーズが多数存在します。
楽器店などでも普通にたくさん見かけますので、興味のある方は一度探してみると良いでしょう。

iSP Technologies「THETA preamp pedal」

iSP Technologies「THETA preamp pedal」

iSPはノイズゲートのDecimatorで有名なアメリカのメーカー。
日本では馴染みが薄いですが、多数のアンプを製造しています。
このプリアンプはアメリカならではの乾いた歪みが得られる2チャンネルのモデル。
ルックスからもアメリカらしさが滲み出ています。
ゲイン幅が非常に広く、クランチからメタル系までこなせる幅広さです。
内部に同社の有名なノイズリダクションのDecimatorを内蔵しているので、ノイズ対策には事欠かない上に、Mid Sweeperというコントロールによって、中域部分を自在に制御でき、幅広い音作りが可能。
高品質な反面、コントロール系は使いずらさもあり、リモートスイッチがないと切替が面倒という欠点も。
FXループもありません。

iSP Technologies「Stealth Pro」

iSP Technologies「Stealth Pro」

こちらはプリアンプではありませんが、上記THETAとセットで使える小型のパワーアンプ。
幅20cm、500g超の小型軽量ボディから、どうなっているのか最大175Wという超強力な大音量をたたき出します。
パワーアンプさえも足下に置いて音色の制御を全て足下でやりたい、という向きには強い味方になることでしょう。
もちろんTHETA専用というわけではないので、小型のキャビネットを用意して、好きなプリアンプと組み合わせることで、小規模なアンプシステムを組み上げるのも面白そうです。

Bluguitar「AMP1」

Bluguitar「AMP1」

Bluguitarはドイツのスタジオ・ミュージシャンであるThomas Blugが自身の理想の音を掲げて運営するブランド。
トーマスは欧州のストラトキングとも呼ばれ、実力には定評があるギタリストの一人ですが、長年ヒュース&ケトナーのサウンドアドバイザーを務めていた経験もあります。
このAMP1は「小さなアンプヘッド」を目標として製作されており、B5版ほどの小さな筐体の中にプリアンプのみならずパワーアンプをも内蔵、nanotubeという超小型真空管を搭載して、これまたどうなっているのか、単体で100Wもの大音量を発生させるモンスターマシンです。
2チャンネル仕様で、歪みチャンネルの方は3種類のキャラクターを選び分けることができます。
一度ORANGEのキャビネットに繋いで試したことがありますが、ハードかつパワフルな大音量が印象的でした。
FXループ、キャビネットエミュレーター、さらにノイズゲートも標準搭載。
拡張性も高く、まさにボードの頭脳として働くことができるでしょう。
現在では、サウンドの異なる「AMP1 Mercury Edition」「AMP1 Iridium Edition」「AMP1 Silver Edition」といった世代へとモデルチェンジされています。

ベース用のプリアンプ・ペダル

ベース用プリアンプ

ベースの音というのは、レコーディングやライブ時アンプだけで音作りするというのは非常に稀なケースで、プリアンプを使用するケースが非常に多いです。
そのためベース用のプリアンプが活躍します。
ギタリストでもベースを演奏して宅録するという人はいるでしょうから、是非以下のページをチェックしてみて下さい。

オススメのベース用プリアンプ・エフェクター – ベース博士


さて、多数の製品を列挙してきました。
昨今では100Wを超えるようなパワーアンプまで足下で制御できるものが出ています。
柔軟な発想で様々なシステムを組めると、運搬、移動もラクになるし、ギターライフそのものも豊かになるでしょう。
今ひとつ練習やリハーサルで満足いっていない方は、ここに挙げてきたプリアンプなども一度考えてみてはいかがでしょうか。

プリアンプ・エフェクター一覧