サウンドにこだわるギタリストであれば、誰もが一度は鳴らしてみたい…そんな憧れの存在がダンブルアンプでしょう。
多くのトップギタリストに愛用されていることから、その名前は聞いたことがあるものの、どういったアンプなのかがイマイチわからない、という方がほとんどだと思います。増して、実際に使用したことがある、という方はほとんどいないのではないでしょうか?
ここでは、そんなダンブルアンプについて、そしてそのサウンドを手軽に再現することのできるダンブル系エフェクターについてお話してみたいと思います。
まず、ダンブルアンプとはどのようなものなのでしょう?最初にその点についてお話させていただきたいと思います。
ダンブルアンプとは、アメリカのギターアンプ職人であるハワード・ダンブル氏の手によって、主にブラックフェイス期のフェンダーアンプをベースとして制作されるカスタムメイド・アンプです。完全な個人製作となりますので、その全てがオーダーメイド品です。
世の中にはダンブル氏と同様にカスタムメイドのアンプを制作しているビルダーは決して少ないわけではありません。しかし、どうしてダンブルアンプだけがズバ抜けて高い評価を受けているのでしょうか?
その最大の理由は、そのギタリストのプレイスタイルや、求めているサウンドを具体的な形にするために、一台一台設計を変えて制作している、という点でしょう。そのため、ダンブル氏はたとえどんなお金を積まれたとしても、彼の認めるギタリストやエンジニアが相手でなければ決してアンプを制作することはない、と言われています。
もちろん、価格も最低でも数百万円以上と非常に高価である、という点や、完全個人製作であることから生産台数が限られてしまう、という点もダンブルアンプの入手を難しくする要因ではあります。しかし、何よりも、ダンブル氏が認めた人物しか手に入れることができない、という点によって、ダンブルアンプは幻の逸品と呼ばれるようになったのです。
前述の通り、一台一台異なったスタイルで製作されているので、すべてのダンブルアンプが同じサウンドをアウトプットしてくれるわけではありません。しかし、ダンブルアンプならではのサウンドの傾向があります。
基本はブラックフェイス期のフェンダーですので、レスポンスが非常に早く、抜ける音…簡単に言ってしまうとこのようなキャラクターを持っています。
ダンブルアンプの愛用者としてもっとも有名なのがラリー・カールトンでしょう。
彼のサウンドは完全にダンブルによって作られていると言ってしまっても過言ではないでしょう。
繊細なピッキングを確実にキャッチしてくれるレスポンスの早さは、ノーマルのフェンダーアンプには不可能です。彼の名演の多くはダンブルがあったからこそ、表現することができたのです。
また、スティーヴィー・レイ・ヴォーンもダンブルアンプの使用者としてよく知られています。
残念ながらスティーヴィーに関しては映像でダンブルを使用している映像はほとんど残されていませんが、後期のアルバム「In step」などでダンブルならではのサウンドを聴くことができます。
Crossroads Festivalでのジョンメイヤーのアンプ:左がDumble Steel String Singer
ジョン・メイヤーに関しても、Two Rockがメインのギターアンプですが、ライヴではダンブルアンプも常にセッティングされており、ここぞという場面で使用されています。
ピッキングする前に音がでる…そう称されるほどに早いレスポンス、そして抜けるのに、決して耳障りではない…そんなサウンドを実現してくれるのがダンブルアンプなのです。
このように、ダンブルアンプは世界中のトップギタリストに愛用されている名機ではありますが、やはり、生産台数も少なく、もし、市場に出ているものを発見できたとしても価格は数百万円にものぼりますので、簡単に入手することはできません。ダンブルアンプを模したアンプもさまざまなメーカーから登場してはいますが、これらのレプリカもやはりかなり高額です。
そこで、もっと気軽にダンブルサウンドを楽しむ手段として登場し、近年高い人気を集めているのがダンブル系エフェクターです。
ダンブル系エフェクターはその名の通り、エフェクターによってダンブルアンプのサウンドを再現しようというものです。これらをフェンダー系のチューブアンプと組み合わせることによって、かなりリアルなダンブルサウンドを再現することが可能となります。
冒頭でお話しました通り、ダンブルアンプには非常に個体差が多く、さまざまなサウンドのものが存在しています。それと同様にダンブル系エフェクターにも、多くのバリエーションが存在しており、今や、一つのジャンルとして成立するほどになっています。
前置きが長くなってしまいましたが、さまざまなダンブル系エフェクターについてご紹介してみたいと思います。
各メーカーから販売されている代表的なダンブル系エフェクターです。
ダンブル系オーバードライブの定番ペダルが HERMIDA AUDIO の ZENDRIVE 。HERMIDA AUDIO のエフェクターはかつては国内での入手が難しかったものの、現在はディストリビューターが登場し手に入れやすくなっています。ZENDRIVEは同社の代表的なモデルで、真空管を搭載した「Zendrive 2」、バージョンアップモデル「Zendrive II」など派生モデルが登場しています。
ブティック系エフェクターブランドとして高い人気を集めているMad Professorの定番オーバードライブペダル、Sweet Honey Overdrive。これもまたダンブル系エフェクターに分類されます。ハンドワイヤードのモデルと、廉価モデルの2バージョンが存在していますが、どちらにしてもダンブル系の心地よいオーバードライブサウンドをアウトプットしてくれます。
シンプルな操作性から、初心者の方でも扱いやすく、ダンブル系エフェクターの入門機としてもおすすめすることができます。もちろん、ダンブル系のサウンドではなく、良質なオーバードライブサウンドを必要とする場面でも活躍してくれる汎用性の高い一台です。
Mad Professor Sweet Honey Overdrive
「Lenny」という名称、そして筐体に描かれた特徴的なハットのイラストからもわかるように、本機は伝説的ブルース/ロック・ギタリスト、スティーヴィー・レイ・ヴォーン所有のダンブル・アンプを目指して設計されたペダルです。ペダル自体のキャラクターが強いため、「ガラス」と形容されることもある煌びやかなSRVのサウンドがこれ一台で再現できます。コントロールもブースト(ゲイン)とトーンの2ノブと非常にシンプルで、直感的な音作りが可能です。歪みはさほど深くないため、メインの歪みというよりはアンプをプッシュするブースターとして使用するのがよいでしょう。
ダンブル系に分類されるエフェクターペダルの中でも、特に素直なキャラクターを持っているのがWampler Pedals Euphoriaです。ギターやアンプの個性を殺すことなく、ダンブル系の雰囲気を加えてくれることから、あらゆる場面で活躍してくれる一台と言えるでしょう。
また、歪みのタイプを切り替えることのできるミニスイッチを搭載していることから、ナチュラルなオーバードライブサウンドから、過激なディストーションまで作りだすことができるのも大きな魅力です。
ダンブル・アンプは所有者のニーズを踏まえて一台一台設計されているため、もちろんサウンドも個体ごとに異なります。しかしそれらに共通するダンブル・アンプの特徴を捉えてペダル化したのが、このGolden Acorn OverDrive Specialです。伝説的ペダル・ビルダー、BJFが複数台のダンブル・アンプを弾き比べたうえで設計された本機のサウンドは、まさにアンプ・イン・ボックスの名に相応しいもの。ピッキングの強弱で細やかにトーンをコントロールすることができます。さらに筐体もミニ・サイズでボードに組み込みやすく、そのうえ価格も手頃であるなど嬉しいことづくめです。
One Control Golden Acorn OverDrive Special
純粋にサウンドにダンブルアンプ的なキャラクターを追加したい…そんな時に試していただきたいのがMojo Hand Fx DMBLです。一般的なダンブル系ペダルのほとんどは、歪みエフェクターとしてのキャラクターが非常に強いものです。それに対して、同モデルは歪み量は控えめであるかわりに、とてもナチュラルなサウンドを生み出すことが可能です。
こちらはダンブル系の回路とCentaur系の回路をひとつの筐体に収めた、いわゆる2in1タイプのオーバードライブ・ペダルです。左側の「AMP」セクションがダンブル系の回路となっており、ゲイン、ボリューム、トーンに加えて「emphasis」というコントロールが装備されています。トーン・ノブが歪み回路の後段でイコライジングを行うのに対し、こちらは歪みに入力される前の信号を調節するもので、この2つを組み合わせることで幅広いサウンド・メイクが可能となっています。「AMP」セクションをその名の通りアンプ的にかけっぱなしで使うもよし、ボリューム・ブースターとして使ってもよし。用途の広い一台です。
Crazy Tube Circuits Unobtanium
このように、さまざまなエフェクターブランドからダンブル系のエフェクターが登場しています。
これらのペダルはどのように使用すべきなのでしょう?
もちろん、エフェクターの使い方は人によってさまざまですし、決まったルールがあるわけではありません。しかし、求めるサウンドに応じてある程度のセオリーがあります。
実際のダンブルアンプに近いリアルなサウンドを求める場合、プリアンプ的に使用するのがベストでしょう。プリアンプをバイパスすることのできるタイプのアンプであれば、そこに接続することによって、簡単なダンブルクローンとして使用することも可能です。
プリアンプのバイパスができないものの場合も、アンプの直前に接続することによって、よりダンブルアンプ的なキャラクターをリアルな形で追加することが可能です。
ダンブル系エフェクターの多くは、良質なオーバードライブとしての一面も持っています。この場合は、他のエフェクターとの相性を考えながら好みの位置に接続して使用しましょう。
もちろん、ブースターとして非常に優れた効果を発揮してくれるモデルも少なくありませんので、さまざまなスタイルで使用してみましょう。
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