フロアタイプ・プリアンプ特集2016年1月28日

フロアタイプ・プリアンプ特集

意気込んでエフェクターボードを持ち込み、いざスタジオでセッティング!という時になって、常設アンプの状態の悪さに、全く望んだ音が作れずにイライラ。このような経験は誰しもあるのではないでしょうか。いくらギターとエフェクターが良くても、肝心のアンプがダメでは話にならず、貸しスタジオでは、常設アンプの状態までは自分でコントロールできません。また、自分の好きな傾向の音と全く違う音のアンプしか置いていないということもありえます。

そんなときに、エフェクターボードに忍ばせておくと安心なのが、フロアタイプのプリアンプ。最近では持ち運びしやすい小型アンプヘッドも増えていますが、ほとんどのモデルで通常のロックバンドのリハーサルには出力が足りません。プリアンプだけであれば、足下に置けるほどに小型化も図れますし、アンプのリターン端子に接続すれば、どんな環境でも常に近い傾向の音を出していくことができます。もちろん、スピーカーやパワーアンプが依然として自分のコントロールから離れているため、完全に望みの音を出すほどには至りませんが、自分の好きな音色からかけ離れるとか、全く使えない音になるなどのリスクは減らすことができます。

プリアンプとパワーアンプ

ギターアンプはプリ部とパワー部の2箇所から成り立っており、プリ部は主に音を作り込む場所、パワー部はそれを増幅する場所です。もともと昔のギターアンプはオーディオ用アンプの延長だったため、歪ませるということは考えられずに設計されていました。ところが、音量を最大近くまで上げ、内蔵の真空管に負担を掛けると、入力されたギターの音がレベルオーバーによるクリップを起こし、歪んできます。その音を発見した世のギタリストたちは、このかっこいい音をこぞって使い始め、それは瞬く間にエレクトリックギター界に広まっていきました。

これこそがオーバードライブ、ディストーションのはじまりですが、このやり方では常にアンプの音量を最大近くまで上げておかねば歪みを得られないということになります。それではやはり使いにくいということで、その後、プリアンプ部で歪みも制御できるような設計が広まりました。現在ではプリ部でほぼ音作りを完了させ、パワー部は増幅に使用するという使い方がもっぱら一般的です。もちろん、昔ながらのパワー部で作る滑らかな歪みにこだわるギタリストは数多く、いまだフルチューブアンプが人気を誇るところからも分かるとおり、パワーアンプが音に及ぼす影響は小さくありません。しかし、ギターアンプ黎明期と比べると、その音色部分に果たす役割ははるかに小さくなっていると言えるでしょう。

プリアンプの使い方

一般的なスタックアンプのアンプヘッドにはプリアンプとパワーアンプが両方入っています。そして、空間系のエフェクトを設置するためのSend-Return端子はちょうどその間に挟まれるように入っています。

プリ部分を自分の機材に組み入れてしまうと、音作りの大部分を自分の機材だけで完結でき、常にある程度安定した音質を得ることができるようになります。スタジオやライブで備え付けのアンプに繋ぐ場合、プリアンプをスルーして直接パワーアンプに入力するために、Send-Return端子のReturn部分に繋ぐという接続法が一般的です。

普通のエフェクターのように、アンプのインプット端子に直接入力しても音は問題なく出ますが、そのプリアンプのポテンシャルが発揮できない場合があります。また、ものによっては、アンプのインプットに挿す場合とリターン端子に挿す場合と、セッティングで両方使えるようになっているものもあります。


プリアンプにはラック型も数多くありますし、あるいはPODなどのシミュレーターもその範疇に入ると思われますが、今回は足下にエフェクターのように設置できるフロアタイプに絞って特集します。また現在では超小型のパワーアンプもいくつか出回っていますので、それもわずかながら紹介しています。

フロアタイプ・プリアンプ特集

2016年現在、手に入れやすいフロアタイプ・プリアンプをセレクトしてみました。サウンドキャラクターもサイズも機能も様々です。エフェクターメーカーよりはアンプメーカーから数多く出されているイメージで、ここではメーカー毎に分けて紹介しています。

Hughes & Kettner「Tubeman II」

Hughes & Kettner「Tubeman II」

この手の製品では老舗の一つ。真空管を1本内蔵しており、Tubemanの名称はそこから来ています。いわゆるヒュース&ケトナーの硬質なサウンドがそのまま得られる逸品で、クリーン、クランチ、リードと3チャンネル仕様に各チャンネルごとにボリュームを設定でき、マスターボリューム、3バンドEQというベーシックなコントロールを持ちます。リードはその硬い音色がやや人を選ぶ向きがあり、ハードロック系のイメージとは裏腹にそこまでハイゲインというわけではありませんが、クリーン、クランチは透明感溢れる絶品サウンドで、根強いファンをもつモデルです。H&Kのアンプは電源を付けるとパネルが青くなるルックスが印象的ですが、このTubemanにおいてもそれは継承されています。


Hughes&Kettner TUBEMAN MKII

Koch「Pedaltone PDT-4」

Kochはオランダ発のアンプブランド。ハイゲイン系のアンプとして日本でも人気があります。同社からは何種類かプリアンプが出ていますが、このPDT-4は上記のH&K Tubemanと同じく、老舗的なロングセラーモデル。2チャンネルですが、ブースト機能付きで実質3チャンネルとして使用可能。さらにバッキングとリード用に別個にボリューム、ゲインを設定出来る上、それもペダルで切替できます。最大の特徴は、真空管を使った0.5Wのパワーアンプ機能でトランジスタアンプに真空管的なサチュレーションを与えることができるところ。その多機能、使い勝手の良さから、長い間人気のあるモデルです。ただ、筐体のでかさと重さも相当なもので、電車であれば移動にカートが欲しくなるでしょう。
Koch「Pedaltone PDT-4」

Koch「63’OD」

Koch 63’OD

おなじくKochの比較的新しいモデル。真空管を1本搭載。上記のPedaltoneが大きすぎると言われたのか、こちらはかなり小型のモデルとなっており、通常のエフェクター2台分ほどのサイズです。63’ODの方は昔のFenderアンプに狙いを付けたオールドなドライブサウンドで、ハイゲイン系が多いこの手の製品の中では珍しい立ち位置。2チャンネル仕様で、ブースト付き。ちなみにこのモデルは拡張性が非常に高く、9vエフェクターへの電源供給機能、プリ・ポスト両系統で使えるFXループ、外部フットスイッチ対応、キャビネットエミュレーターを装備し、XLR端子を使いそのまま繋いでPA出力や録音も可能。まさに至れり尽くせりの一台です。エフェクターボードの頭脳として活躍するでしょう。


Koch 63’OD

Koch「Superlead」

Koch Superlead

上記のOD’63と同じコンセプトの製品ですが、Superleadは広いゲイン幅を持つモダンな音色のモデルです。クリーンとドライブの2チャンネル仕様に、ブースト機能付き。音色以外の機能はOD’63と全く同じため、その拡張性も同じです。自分のプレイスタイルによって選び分けるとよいでしょう。


Koch Super Lead

ALBIT「A3GP Mark II」

ALBIT「A3GP Mark II」

安価で小型軽量のなかに真空管搭載でねばっこいトーンを実現しています。2チャンネル仕様で、Drive側はCrunch/Leadをスイッチで切り替えられます。CROSSというつまみでは、Fender系~Marshall系とサウンドキャラクターを可変可能。ドライブトーンにクリーントーンが常に混ざるという独特のシステムを採用しており、自在に設定するにはやや慣れが必要ですが、そのクリーントーンの評価は非常に高いです。通常のエフェクター並みのサイズ内にTuner Out、FX Loopを備える上、Sendのレベルまで設定できるというこだわりぶり。エフェクターボードの旗艦的存在として威力を発揮しそうです。また、Aux Inまであるので、ヘッドホンを使っての夜間練習も手軽に出来ます。


ALBIT A3GP MARKII

ALBIT「A1PS-G」

ALBIT「A1PS-G」

こちらは真空管を搭載しないモデル。チャンネルが単一ですが、BOOSTスイッチがあり、音量増幅が可能。また、パワーサプライを兼ねており、本体側面には6つものDC OUTを併設します。チューナーアウトはありませんが、上のA3GPよりもさらに小さいので、エフェクターで歪みを作りたい、あるいはクリーンしか使わないという方であれば、こちらも選択肢として十分候補に挙がるでしょう。

ちなみに、ALBIT(アルビット)は主にエフェクターや、ボード内に設置するための小型プリアンプ、DIなどを製作している、埼玉発の純国産の会社。アンプの改造や修理も行っています。純国産ならではの安心感というものはやはり少なからずありますね。

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ORANGE「Bax Bangeetar Guitar Pre-EQ」

ORANGE「Bax Bangeetar Guitar Pre-EQ」

小型アンプヘッドのラインナップが充実するORANGEが満を持して発表したフロア型プリ。上記の製品達と違うのは、通常のドライブペダルとしての使用も想定されているところ。それゆえに9V電池でさえ稼働できます。非常にアンプに近いサチュレーション、エッヂの立ち方で、まさにOrangeアンプそのものといったジャキッとした音が得られます。EQはMidの設定の自由度が非常に高いので、質感もこだわることが出来、Gain幅はアンプに比べても非常に広く、ハードロックぐらいまでならカバーできそうです。チャンネル切替式ではなく、OnOff切替およびブースト付き。音色は素晴らしいものの、単一チャンネルである上、入出力がインプット、アウトプットだけなので、ボード内の旗艦的利用には向かない印象です。


ORANGE「Bax Bangeetar Guitar Pre-EQ」

AMT Electronics「SS-20」

AMT Electronics「SS-20」

こちらは真空管1本搭載、2チャンネル仕様のプリアンプで、AMTの代表的モデル。AMTはもともとAsiaという名で電子楽器部品を製造していたロシアのメーカーで、現在はAMTと名を変え、ギター用のエフェクターや小型のプリアンプなどを多数製造しています。
クリーン、ドライブの切替と、ドライブはクランチとリードの2種類を切り替えられます。プリ管を最大限に生かすため、内部で入力電圧を250Vへと昇圧させており、スムーズなドライブトーンが得られます。FXループを備え、キャビネットエミュレーターも装備しているので、直接の録音やPAへの入力が可能。ハイゲイン系のプリアンプとして非常に高品質で、拡張性も抜群です。

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AMT Electronics「SS-11」

AMT Electronics「SS-11」

上記SS-20の原型となった一台。こちらはプリ管を2本搭載。2チャンネル仕様ですが、クリーンにBrightスイッチ、ドライブにTone Shiftスイッチが付いており、より幅広く細かい音作りが可能です。SS-20とは違い、キャビネットエミュレーターは付いていないようですが、歪みのサウンドセッティングがより細かく出来るのは魅力。

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AMT Electronics「SS-30 BULAVA」

こちらは上記2種と違い、真空管非搭載モデル。クリーン、クランチ、リードと3チャンネル仕様で、それぞれ独立したレベルとゲインを使ってセッティングできます。FXループは言うまでもなく、キャビネットエミュレーター、MIDI機器との連動も可能と、拡張性は抜群。さらに電池で駆動も可能と、真空管を搭載していないがゆえのメリットを最大限に感じられる仕様となっています。

AMTには上記に記載した3種の他に、普通のエフェクターとほぼ同サイズのプリアンプ、「●-2」という名のシリーズが多数存在します。楽器店などでも普通にたくさん見かけますので、興味のある方は一度探してみると良いでしょう。

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Laney「IRT-PULSE」

Laney「IRT-PULSE」

同社のラックタイプアンプヘッド「IRT-STUDIO」のフロアタイプ版。フットスイッチがなく、基本的に単一チャンネル仕様で、真空管を一つ搭載しています。いわゆるライブやリハーサルで使うことを想定としているだけでなく、USBオーディオインターフェース的な機能も併せ持っており、半分アンプシミュレーター的な立ち位置にあるプリアンプで、練習用にもうってつけです。歪ませるとLaneyならではの高域の密度が高い歪みが得られますが、EQの設定機能が貧弱なので、これ単体で全て済ますというのは難しそう。現在Laney製品は正規代理店であるサウンドハウスが流通を一手に握っていますが、価格がそれほど高くないため、手軽にチューブサウンドを得ることができます。

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T-Rex 「Spin Doctor2」

T-Rex 「Spin Doctor2」

そのデザインからアメリカかと思いきや、実は北欧デンマーク発のエフェクターブランドT-Rex。これはT-Rexの放つフラッグシップモデルに位置するプリアンプで、真空管2本搭載、4バンドのEQコントロールを備え、驚くべきはマルチエフェクターばりにプログラムが可能なところ。単体でも4つまでプログラムを保存して、随時切り替えることができます。また、スピーカーシミュレーターを備え、そのままレコーディングにも使用可能。ORANGEのものと同じく、アンプのインプットから直接繋いで、単体の歪みペダルとして使えるようにも設計されているようです。音色はチューブ的なサチュレーションが強く感じられる、中域豊かでオールドスクールなもの。日本ではややマニアックなモデルですが、欧米圏での試奏動画は多数あがっています。動画を見て気になった方は候補に入れてみてもいいのではないでしょうか。


T-Rex Spin Doctor2

iSP Technologies「THETA preamp pedal」

iSP Technologies「THETA preamp pedal」

iSPはノイズゲートのDecimatorで有名なアメリカのメーカー。日本では馴染みが薄いですが、多数のアンプを製造しています。このプリアンプはアメリカならではの乾いた歪みが得られる2チャンネルのモデル。ルックスからもアメリカらしさが滲み出ています。ゲイン幅が非常に広く、クランチからメタル系までこなせる幅広さです。内部に同社の有名なノイズリダクションのDecimatorを内蔵しているので、ノイズ対策には事欠かない上に、Mid Sweeperというコントロールによって、中域部分を自在に制御でき、幅広い音作りが可能。高品質な反面、コントロール系は使いずらさもあり、リモートスイッチがないと切替が面倒という欠点も。FXループもありません。

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iSP Technologies「Stealth Pro」

iSP Technologies「THETA preamp pedal」

こちらはプリアンプではありませんが、上記THETAとセットで使える小型のパワーアンプ。幅20cm、500g超の小型軽量ボディから、どうなっているのか最大175Wという超強力な大音量をたたき出します。パワーアンプさえも足下に置いて音色の制御を全て足下でやりたい、という向きには強い味方になることでしょう。もちろんTHETA専用というわけではないので、小型のキャビネットを用意して、好きなプリアンプと組み合わせることで、小規模なアンプシステムを組み上げるのも面白そうです。

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Bluguitar「AMP 1」

Bluguitar「AMP 1」

Bluguitarはドイツのスタジオ・ミュージシャンであるThomas Blugが自身の理想の音を掲げて運営するブランド。トーマスは欧州のストラトキングとも呼ばれ、実力には定評があるギタリストの一人ですが、長年ヒュース&ケトナーのサウンドアドバイザーを務めていた経験もあります。
このAMP 1は「小さなアンプヘッド」を目標として製作されており、B5版ほどの小さな筐体の中にプリアンプのみならずパワーアンプをも内蔵、nanotubeという超小型真空管を搭載して、これまたどうなっているのか、単体で100Wもの大音量を発生させるモンスターマシンです。2チャンネル仕様で、歪みチャンネルの方は3種類のキャラクターを選び分けることができます。一度ORANGEのキャビネットに繋いで試したことがありますが、ハードかつパワフルな大音量が印象的でした。FXループ、キャビネットエミュレーター、さらにノイズゲートも標準搭載。拡張性も高く、まさにボードの頭脳として働くことができるでしょう。日本ではイケベ楽器店の独占取り扱いとなっています。

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まとめ

さて、多数の製品を列挙してきました。昨今では100Wを超えるようなパワーアンプまで足下で制御できるものが出ています。柔軟な発想で様々なシステムを組めると、運搬、移動もラクになるし、ギターライフそのものも豊かになるでしょう。今ひとつ練習やリハーサルで満足いっていない方は、ここに挙げてきたプリアンプなども一度考えてみてはいかがでしょうか。

プリアンプ・エフェクター一覧

最終更新日 : 2016/08/16

パッチケーブル 自作