《アナログディレイの名機》Electro Harmonix Memory Manとは?2025年1月17日

《アナログディレイの名機》Electro Harmonix Memory Manとは?

世界初のコンパクトアナログディレイとして登場したElectro-Harmonix「Memory Man」。
1970年代の登場以来、数多くのギタリストに愛され、いまだアナログディレイの代名詞として語られる伝説的ディレイです。
その魅力に迫ってみましょう。

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Memory Manの歴史

60年代、唯一のディレイエフェクトとして主流であったテープエコーは、テープに録音したものを遅らせて再生するという原始的な機構がゆえに、巨大かつデリケートで扱いにくいものでした。
1969年、コンデンサーに音をため込み遅延させて送り出すという方式の「BBD素子(Bucket Bridge Device:バケツリレーと訳される)」が登場。
これはそれまでのディレイの機構を打ち破り得る発明であり、70年代以降のアナログディレイの隆盛へとつながっていきます。


Electro Harmonix Memory Man 1976

1976年、Electro-Harmonix社は世界初のコンパクトサイズ・アナログディレイとして知られる「Memory Man」をリリース。
初期のものにはブーストスイッチが備わり(のちのLevelコントロールの原型とも言われます)、同機種を象徴するChorus/Vibratoのモジュレーションは後継バージョンで加えられていきました。
その後、上位機種として現在も系譜が引き継がれる「Deluxe Memory Man」(1980年登場)、そしてステレオ仕様の「Stereo Memory Man」などがラインナップに加わります。
Memory Manは現在のラインナップに至るまでに多くのモデルチェンジをしていますが、時代ごとに手に入りやすいBBD素子を使用しているからと言われています。
実際に弾いてみないとサウンドの傾向も掴めないというほどに様々なものがありますが、レティコン社のBBD素子が使われた最初期のモデルは中でも特別視されており、高値で取引されます。


electro-harmonix stereo memory man

BBD素子は一時期生産されない時期がありアナログディレイは絶滅の危機に瀕しましたが、現在では少量ながら生産が行われており、Electro-harmonix社からも正統な後継製品としての「Deluxe Memory Man」、時代に合わせて省スペース化を進めた「Nanoシリーズ」や、別モデル、下位モデルとしての「Memory Boy」、「Memory Toy」などの製品がラインナップされ、今では貴重となった伝統を守り続けています。

Memory Manのサウンド特性

音色が暖かくまろやか、繰り返す度に減衰するなどといったアナログディレイの特徴が全てそのままMemory Manに当てはまります。
むしろ実際的には逆というべきで、コンパクトアナログディレイ初号機であるMemory Manのサウンドを言い表すためにこのような特徴が挙げられてきたというのが正しいでしょう。
アナログディレイはデジタルに比べてしばしば音楽的、人間的などと評されますが、このような特徴ゆえにデジタル全盛の時代にあってもなお根強い支持を得続けています。

モジュレーション、ブースト、発振

ディレイ音にモジュレーションを掛けるのはMemory Manを代表する機能のひとつで、さらにこのモジュレーションが軽やかで爽やかなものからサウンドを破綻させるほどの強烈なものまで、非常に幅広い設定に対応するのも独自の特徴です。
これにより作れるサウンドの幅広さを獲得しており、様々な使い方を試すギタリストが数多く存在します。
Memory Manはつなぐだけである程度音量が上がるという特徴を持ち、これは内蔵のバッファーによるものです。
現在のモデルではこれをコントロールする機能を持つものも存在し、「Deluxe Memory Man」ではLevelつまみの調整によって意図的に出力を制御できるようになっています。
アナログディレイの特徴のひとつである発振は、フィードバックを増やすと信号が回り続けてハウリングに近い状態を引き起こすというものですが、Memory Manの発振は低域に寄った独特の音質を持ち、こちらも音楽的に利用されることがあります。


Electro-Harmonix Deluxe Memory Man Echo Chorus Vibrato

Memory Manを使用したギタリスト

使用ギタリストは多く存在しますが、独自の音世界を作り上げるエリック・ジョンソン氏、そしてU2のジ・エッジ氏などが有名です。
特にジ・エッジに関しては付点8分ディレイの発明者とも称されており、革新的なディレイの使い方を世に提示したという点において見逃せない存在。
彼の作り上げるサウンドの中心に位置していたDeluxe Memory Manは、U2のサウンドを語る上でも大きな要素になっていたと言うことができるでしょう。

メモリーマンのバリエーションモデル

ここからは、Electro-Harmonix純正のMemory Man系ラインナップと、オリジナル開発者が手がけた派生モデルを整理して紹介します。
いずれもBBD素子による暖かなアナログディレイという軸は共通しつつ、最大ディレイタイムやモジュレーション、タップテンポの有無で性格が分かれます。
まずは純正アナログディレイ各機の違いを一覧で確認しましょう。

モデル 最大ディレイ モジュレーション タップ/EXP 位置づけ
Deluxe Memory Man 550ms Chorus/Vibrato EXP対応 フルサイズの定番機
Nano Deluxe Memory Man 550ms あり(Rate/Depth) なし 小型化した現行版
Memory Boy 550ms 波形選択あり EXP対応 中低域が厚い兄弟機
Deluxe Memory Boy 700ms あり(連続可変) タップ+EXP FXループ搭載の多機能機
Memory Toy 550ms オン/オフのみ なし 最小・最廉価

Electro-Harmonix純正アナログディレイ

デジタル・マルチディレイ

オリジナル開発者が手がけたペダル(Xvive)

日本ではワイヤレスシステムなどで知られる中国発のXvive。
同社のラインナップには、実際にDeluxe Memory Man開発に携わったHoward Davis氏が設計するディレイペダルが2台あります。

メモリーマンのサウンドを再現した他社製ペダル


今でも現行品が存在しますが、それ以上にデジタル、アナログ問わずモデリングが膨大な数リリースされており、今ではMemory Man系といったディレイのいち勢力を築き上げているという状態です。
同じディレイのカテゴリに入るエフェクターでこれ以上のリスペクトを受けるモデルは皆無で、それほど魅力あるサウンドという何よりの証拠でしょう。
また、それを得るための選択肢が多いというのはプレイヤーとしては嬉しいところですね。