コンパクトエフェクターには電池の使用ができるものがほとんどですが、実際にライブハウスなどで使う際、意図せぬ電池切れのトラブルも考えて、結局アダプターに頼っている人は少なくないでしょう。今回はエフェクターのための電源について掘り下げてみましょう。
エフェクター用の電源アダプターは大多数が「DC9V センターマイナス型」というもので、その後に出力量が○○mAという風に表記されています。たまにセンタープラス型に出会うことがありますが、間違えて使ってしまわないようにしましょう。また、アンペア表記された出力電流は非常に重要です。エフェクターそれぞれに必要な電流量が決まっており、それを賄えるものを選ばなければなりません。コンパクトエフェクターひとつぐらいであればあまり気にする必要はありませんが、複数のものを分岐ケーブルで一度に賄う場合、またデジタルのマルチエフェクターなどは消費電流量が高く、場合によっては大容量のものを使う必要が出てきます。たとえば500mAが必要な機材は700mA以上のものを使うなど、多少の余裕を持った上で選びましょう。
安物のアダプターをつないで、演奏の際に謎のノイズに出会ったギタリストは少なくないはずです。今よりもアダプター自体の設計が古く、また高価であった昔は、特にこのようなトラブルが多くありました。電源経由でノイズを引き込んでしまったり、ACからDCに変換する際に起きるリップルノイズが混じるなど、原因は様々。総じてチープな作りのアダプターでよく発生するため、エフェクター用にノイズ対策が施されているしっかりしたものを選びましょう。
ちなみに、分岐ケーブルを使用し、複数のエフェクターに分岐した場合、デジタルとアナログのものを混在させるのは、ノイズ対策の観点からあまりおすすめできません。
デジタルエフェクターはアナログのものに比べると桁違いの電力を消耗します。そのためはじめから電池駆動できないものも多く存在します。たとえばアナログのBOSS BD-2 Blues Driverは20mAであるのに対して、デジタルのハイエンドディストーションstrymon SUNSETは250mAと、10倍以上の電力を消費します。マルチエフェクターに至ってはさらに大きく、こちらも常に気にしておかねばならない数値です。
このような消費電力量が多いモデルについては、最初からアダプターが付属していることが多いため、それを利用するのがもっとも確実です。パワーサプライなどでマルチエフェクターまで補おうとする場合、容量には注意しておきましょう。
エフェクターは通常9Vで動作します。そのため必要な電池も9V電池が必要になるわけですが、電源アダプターもそれと同じく、DC9Vのものを使うのが普通です。ただし、ブースター系のエフェクターなどで、18V対応や12V対応など、9Vを超える電圧に対応したものが昨今少なからず存在します。
おもに電圧を大きくすることで、ヘッドルームを広く取ることができ、ダイナミックレンジが広がります。ブースター系に多く見られるのもそのためです。
エフェクターをずらっと並べて、18V対応のものだけ別のアダプターから引っぱってくる…、これはなかなか面倒なものです。こういう場合、まとめて9Vのアダプターで動かしても問題ないケースもあります。18V対応のエフェクターは少なからず、9Vでも普通に動かすことはできるからです。ただしそのエフェクターの本領が発揮できるかどうかは別の問題。もちろん18V専用機は9Vの電源を使っても動作しません。この場合は動かないだけで済みますが、逆に9V対応の通常のエフェクターにDC18Vのアダプターを繋ぐと最悪故障することもあり得るので、注意しましょう。
昨今のパワーサプライには9Vの出力端子と、18Vや15Vなどの高電圧の出力端子が両方付いているものがありますので、そのような機材を使うと、さまざまなエフェクターの混在に力を発揮します。
昔のファズやオーバードライブなどは、電池がなくなる寸前の低電圧時における、レンジが狭くなった独特のサウンドが、好意的に受け入れられているような場合があります。アルカリよりマンガン電池が音が良いとされる1つの根拠がここにあり、これを再現するために低電圧の出力端子を備えるパワーサプライもごく稀に存在します。
高価なエフェクターにも付属で付いていることがある、CAJの代表的エフェクター用電源。2,000円程度と無理のない価格でありながら、優秀なフィルター回路によりノイズ成分を徹底的に除去した製品です。1300mAと容量的にも申し分なく、長辺5cm、重さ80gのずば抜けた小型軽量で荷物を圧迫しないのは嬉しい点です。メインに使用しているギタリストが多いのもうなずけます。
PB12DC9-2.1を…
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モリダイラ製の低価格アダプター。大容量というほどではありませんが、その分非常にコンパクトであり、電源タップで他のプラグと干渉しにくい形状をしています。500mAはアナログのコンパクトエフェクターなら複数繋いでも大丈夫な容量。エフェクターの数が2~3個程度であればおすすめのアダプターです。
Silent Power DC-009SPを…
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登場以来、定番アダプターとして長く愛される製品。1700mAの大容量で、マルチエフェクター系の製品でも余裕で動かすことができます。ケーブルが長く硬いため、取り回しにくい反面、断線などのトラブルが起きにくく、どのような現場でも延長コードなしに電源を引っぱってくることが可能です。100V~240Vまでの入力に対応し、日本国外でも使用できます。
1 SPOTを…
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高品質なクオリティで有名な国産ブランド、Free The Toneの電源アダプター。高周波ノイズやハムノイズを軽減するためのフィルター回路を組み込み、省サイズを実現した高品質モデルです。500mAの容量で、単一か数個までのエフェクターに対し、クリーンな電源を供給してくれるでしょう。型番にDが付くものが横型、Hが付くものが縦型で、使いやすいものを選びましょう。
Free The Tone FA-0905を…
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パワーサプライは供給器という意味なので、厳密には電源アダプターもパワーサプライの一種と言えるのですが、ギターエフェクターの世界では、電源アダプターからの電力を中継、適切なノイズ対策などを施し、クリーンな電源を複数に分岐するための機器という位置づけです。分岐できる数が製品ごとに決まっており、18Vの電源を取り出す端子を備えた物もあります。総電力量も機器ごとに決まっており、自分の使用環境に応じて選ぶことになるでしょう。
デジタルとアナログの混在を前提とするなら、各端子ごとにアイソレートされているものを選ぶのが確実です。各出力が完全に独立しており、相互の影響を受けません。
9Vのポートを6個装備、そして9V、12V、18Vに電圧を変えられるポートを2個搭載した、パワーサプライの定番モデル。合計で2000mAまで供給が可能で、各ポートがアイソレーションされており、デジタルとアナログを混在させても問題ありません。シリーズにはポートの数に合わせてVA-01、VA-05、VA-12など、姉妹品が複数ラインナップされています。
VITAL AUDIO POWER CARRIER VA-08 MKII
90年代に登場したラックシステム用のパワーサプライAC/DC Stationの第6世代。交流直流変換にはノイズレスなリニア方式を採用し、新品の9V電池の電圧に近い約9.65Vの電圧で8系統に出力します。最大電流450mAとやや小容量で、アイソレートされていないのが残念な点ではありますが、その分小型で安価でもあり、使いやすい定番パワーサプライとなっています。
Custom Audio Japan AC/DC Station VI
国産エフェクターメーカー、One Controlのパワーサプライ。非常に小さく軽いのが特徴で、その小型ながら最大電流を2000mAまで確保し、12~18Vに可変できる出力ポートを一つ確保。高い実用性を誇ります。All in One Packは電源アダプターとDCケーブルがセットになったもので、本体だけでも別の製品として販売しています。
業界標準とされるロングセラーのパワーサプライで、楽器店などでも見る機会の多いモデルです。アイソレートされた出力ポートを8つ搭載し、そのうちの6つについては12Vにまでに対応し、別売りのダブリングケーブルを使用することで、ポートを二つ使い、18V出力やポートごとの容量を2倍に増やすことも可能。残りの二つは歪み用などに9V~4Vへの減圧が可能となっています。本体も重く、電源ケーブルもかさばりますが、長く愛されるだけあって、音質や安定度は群を抜いています。
500mAの出力を5つ搭載するstrymonのパワーサプライ。完全なアイソレーションが施されており、超がつくほどのローノイズ設計は、さすがに最高峰エフェクターメーカーを感じさせるクオリティです。500mA出力はそれだけで10台に繋げるほどの電流量で、各ポートをさらに分岐することも可能。付属の専用アダプターが非常に大きく使いにくいのは難点ですが、音質の点からは他の追随を許さない存在感を誇ります。
30年以上もラインナップに名を連ねる、パワーサプライの最古参。9V出力を7系統装備しています。アイソレートは施されておらず、18V出力などもないなど、現在となっては構造に古さを感じる点もありますが、小型軽量な上に安価で、最初の一台としては申し分ありません。2200mAもの大容量ACアダプターが付属します。
リチウムイオン電池の大容量化が劇的に進化する昨今において、エフェクターの世界にもバッテリー内蔵のものが現れはじめました。10年以上も前に現れたSANYO eneloop music boosterは出てくるのが早すぎたのか、あっけなく販売終了となりましたが、現在では楽器メーカーからの新製品を多数見つけることができます。充電式のメリットは、コンセントが要らないため、セッティングに時間が掛からないこと、そして電源からのノイズを完全にシャットアウトできる点でしょう。
8000mAhの大容量バッテリーを搭載したパワーサプライ。8つのアイソレートされた出力端子を備えており、300mAが6つ、500mAが2つとなっています。18V対応の端子はありませんが、付属の昇圧用Yケーブルを使う事で、ポート二つの同時使用において実現可能。公式には200mA x 2台、100mA x 6台を同時に動かして、フル充電で約8時間の連続使用が可能となっており、実際の演奏に十二分な容量が確保されています。重量も250gを切る軽量を実現しており、非常に使いやすいモデルと言えるでしょう。
Vital Audio POWER CARRIER VA-R8
なんと12800mAhという驚きの容量を誇るKIKUTANIのパワーサプライ。9V出力を1つ、12Vを1つ、18/24Vの切り替え出力を1つ、計10系統もの出力を用意しており、通常の使い方で困ることはまずありません。横14cmは他のパワーサプライと比較しても大きくなく、重量も335gと健闘しています。惜しむらくはアイソレートされていないところですが、ここにこだわらない場合は最良の選択になりそうです。
エレキギターの世界において避けて通れない電源の問題。直接音に影響しないため後回しにされがちですが、良い音はやはりクリーンな電源から。一度良いものを選んでおくことで、後々まで使っていけることを考えると、コストパフォーマンスは悪くないと言えます。ぜひ軽く見ることなく、良い選択をしてください。
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