
世界には無数のエフェクターがあり、中でも歪み系に至っては万を数えるほど存在します。
そんな多種多様な歪み系エフェクターの中でも、BOSS BD-2 Blues Driver(ブルースドライバー)は最も愛され、使用者の多いエフェクターの一つでしょう。
今回はBD-2の人気の秘密を探ると共に、かつて一大ブームを巻き起こした他社によるモディファイ製品の数々、そして本家BOSSによるモディファイBD-2Wについて紹介していきます。

いまや定番どころとして確固たる地位を築いているBD-2ですが、他社の定番機種Ibanez TS-9や、MXR Distortionなどに比べると、ずいぶんと遅く生まれたモデルで、発売は1995年となっています。
フェンダー系ツイードアンプ的なサウンドを狙って開発されたペダルであり、粗い歪みにジャキッとした高音が持ち味です。
発売から30年を超えた現在もBOSSの現行ラインナップに名を連ねており、2023年にはBOSS創業50周年を記念した限定仕様「BD-2-B50A」が世界7,000台限定で登場するなど、ブランドの顔としての存在感は健在です。
従来のオーバードライブのようにダイオードでクリップさせるのではなく、またディストーションのように増幅した波形を刈り取って歪ませるのでもなく、基本となる音を作った後にアンプと似たディスクリート回路を通して歪みを得るような構造になっています。
この二段階での音作りをエフェクターに内包するのは当時としては新しい発想であり、現在のダンブル系オーバードライブの始祖的な位置づけとしてもいいかもしれません。
※ちなみに、BD-2という名ですが、BD-1は存在せず、単にBOSSが新しさを演出したかったというだけのようです。
使用ギタリストは、ラリー・カールトン、ポール・ウェラー、山口一郎(サカナクション)山中さわお(the pillows)、真鍋吉明(the pillows)、藤原基央(BUMP OF CHICKEN)、田渕 ひさ子(toddle、blood thirsty butchers、NUMBER GIRL)などなど。
国内のアーティスト、特にロック系ギタリストから高い支持を集めています。
また近年では、2021年にデビューしたアイルランドの新鋭バンドInhalerのエライジャ・ヒューソンのペダルボードにもBD-2が確認されるなど、BOSS公式も「新しい世代のギタリストたちがブルースドライバーを発見している」と紹介しており、世代を超えて愛用者を増やし続けています。
BD-2人気の理由として、まず第一にその万能性があります。
ブルースドライバーという名の通り、ブルースに使うも良いですし、ゲインを上げると、軽いディストーションと呼べるぐらいまで歪むので、そこそこハードなロックでも大丈夫です。
また、後段のアンプやエフェクターをプッシュするためのブースターとしても活躍します。
この普及品の価格帯でここまでの万能性を誇るモデルは、他にはほとんど存在しません。
次に、その表現力が挙げられます。
最近では高価なハンドメイド系のブティックペダルが山のようにありますが、どのペダルにしても「真空管アンプのような」「ピッキングによく追従する」といった表現で、サウンドの良さが語られます。
BD-2はこの比喩表現がそのまま当てはまります。
ピッキングの強弱に歪みが追従するので、弱く弾くと軽く小さな音、強く弾くとしっかりと歪んだ大きな音という風に、ピッキングの強弱に敏感に反応し、それをそのまま演奏に活かすことができます。
これは元より良いアンプの特性の一つですが、それを明確にエフェクターで実現したのもBD-2が最初ではないでしょうか。
ツマミはLEVEL、TONE、GAINの3つ。
GAINを絞り目にして、TONEを上げすぎずに使用すると、適度なコンプレッション、ピッキングの強弱やボリュームにしっかり反応してくれる、ブルース系のソロにぴったりなサウンドが得られます。
TONEをうまく調整して歌の邪魔にならないよう設定することで、グランジ、パンク系や昨今のJ-POPにも多い、かき鳴らし系のバッキングにも最適な音が見つかります。
またGAINを上げると、ハードに歪ませることができます。
その歪み量はディストーションに迫るほどで、かなり荒々しいロックでも演奏出来ますが、歪みの質はどちらかというとファズっぽいものに近く、あまりスムースな印象を受けないざらついたものなので、ロングトーンを多用するリードギターや、パワーコードで刻んでいくメタリックなハードロックなどには不向きです。
また、ブースターとして利用すると、元々の中高域を強調するその特性のためか、質感をワイルドにしながらのゲインアップを図れます。
こちらもまた魅力的な音であるのは言うまでもありません。
基本的にあらゆるシチュエーションでそつの無い音を模索できる優れたペダルではありますが、強調された中高域に比べて低音が貧弱に感じられることが多々あり、そこがこのペダルの弱点とも言えます(後にBOSSから登場するBD-2Wでは、その弱点は解消されています)。
そのため、シングルコイルのギターに比べると、レスポール系などではやや音作りが難しいような印象を受けます。
ジャキッとしたサウンドの質感がレスポールと合わないためですが、BD-2とレスポールで良い音を出している人も数多いので、シングルコイルほど簡単ではないものの、使い方とセッティング次第でうまく作ることも可能です。
BD-2はそのポテンシャルの高さゆえ、廉価品特有の安価なパーツを置き換えることでグレードアップを図るモディファイ品が数多く作られてきました。
2000年代から2010年代にかけては、国内外の工房がこぞってBD-2のモディファイを手がけ、一つのジャンルとして定着していたほどです。
しかし2017年頃にBD-2の基板が表面実装(SMD)方式へと変更されたことで、従来のような部品交換によるモディファイは極めて困難になりました。
これを受けて各工房はBOSS製品のモディファイ受付を相次いで終了しており、ここで紹介するモディファイ品の多くは、現在では中古市場でのみ出会える存在となっています。
| モデル | 工房/ブランド | モディファイの方向性 | 現在の状況 |
|---|---|---|---|
| BD-2 Mod “Phat Tube” | Keeley Electronics | 低域強化(Phat SW増設) | 受付終了(後継機Super Phat Modを製品化) |
| RE-J BD-2/Super | Analog.Man | 高域の暴れを抑え原音を活かす | 旧基板の個体のみ受付 |
| BD-2 el Diablo | Soul Power Instruments | クリーンミックス等のフル改造 | 流通在庫のみ(受付状況は要確認) |
| BD-2 mod / Double SW | WEED(HARRY’S ENGINEERING) | ノイズレス化+ボトム/プレゼンスSW | 受付停止中(2017年〜) |
| Modified BD-2 Blu Drive | JHS Pedals | 音質ブラッシュアップ+ファズSW | 生産完了 |
| BOSS BD-2 Modify | Ovaltone | フルディスクリート化 | 生産完了 |
| Hyper BD-2 Mod. | Dr.Lake | 低域・高域の改善+モード切替 | 生産完了 |
| BD-2 F.G.R Mod. | Freedom C.G.R. | 原音に忠実な音質の底上げ | 受付終了 |
モディファイ文化が下火となった現在でも、新品もしくは条件付きで手に入る、または依頼できるものを紹介します。
以下のモディファイ品は、工房側の受付終了や生産完了により、現在は新規に入手することができません。
いずれもBD-2モディファイ全盛期を彩った名作で、中古市場では今でも人気があります。
その他、自作で改造を施している人も数多く見られます。
「bd-2 改造」などで検索すると、数多くの個人ブログがヒットしますが、これもまた、BD-2が愛されている証拠でしょう。

上に列挙したようなエフェクターのモディファイが流行しだしてから、そのやり玉として真っ先に使われたのが当時の現行機種Ibanez TS-9であり、次にBOSSのコンパクトエフェクター群でした。
2014年、それを受けて、公式のBOSSがついに自社製品のモディファイ品を扱うまでに至ります。
そのシリーズが「技 WAZA CRAFT」と名付けられた、メイド・イン・ジャパンの一連のシリーズです。
歪みペダルではSD-1と並んでBD-2がその新シリーズの軸として登場しました。
回路構成はOvaltoneのモディファイ品と同じく、フルディスクリートを実現。
しかし、単純に回路を変えて別物にしてあるわけではなく、従来のBD-2のサウンドに加えて、カスタム・モードというキャラクターの異なるサウンドを別個に選べる仕様になっています。
さらに、そのサウンドキャラクターを切り替えるために、回路構成もそれぞれに最適なものを二つ搭載するというこだわりぶり。
| モデル | サウンドモード | 電源 | 消費電流 | 外形寸法 | 質量 |
|---|---|---|---|---|---|
| BD-2 | シングル | 9V電池/ACアダプター(別売) | 20mA | 73(W)×129(D)×59(H)mm | 360g(電池含む) |
| BD-2W | スタンダード/カスタム | 9V電池/ACアダプター(別売) | 18mA | 73(W)×129(D)×59(H)mm | 430g |
BOSS BD-2 vs BD-2W WAZA Craft 【Supernice!エフェクター】
同じ条件(ギターやアンプのセッティング)、同じツマミの位置で2機種を比較している
BD-2Wを”カスタム・モード”にすると、明らかに粘りと中域のコシが増しているのがはっきりわかります。
ピッキングの強弱やギターのボリュームに対する反応などは従来の良さをそのまま受け継ぎ、その上で、恐らくBOSSも弱点と気がついていた、中低域を落とさないような工夫が重ねられているのでしょう。
その落ちない中低域がワイルドさの強調にもつながっており、しっかりとした図太い音を実現しています。
BOSSらしい優等生的ではない歪みペダルへ、良い意味で変貌していると言えるでしょう。
かつて百花繚乱だった他社のモディファイ品がほぼ姿を消した現在、新品で安定して手に入る「モディファイ系BD-2」は事実上このBD-2Wだけとなりました。
モディファイ文化の到達点を公式が製品として残してくれた、という意味でも価値ある一台と言えるでしょう。
発売以降、大幅なモデルチェンジを受けていないところから見ても、BOSS BD-2が開発時点ですでに非常に高い完成度を持っていたことは疑いようもありません。
これほどハンドメイド系エフェクターが百花繚乱する中で、なお埋もれることなく、今でも多数の人々に愛されているところに、このペダルの魅力の底知れない深さが垣間見られます。
90年代以降に登場したエフェクターでここまで定番化しているものは他になく、まさに類を見ないモンスターマシンと言えるでしょう。
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