アナログ・モデリング(テープエコー)ディレイ特集2025年5月14日

アナログ・モデリング(テープエコー)ディレイ特集

ディレイ・エフェクトはギターの音作りを司る上で欠かせない要素の一つです。
現在ではBOSSのDDシリーズに代表されるようなデジタル・ディレイ、MXRのCarbon Copyのようなアナログ・ディレイの2種が主に使われていますが、それらの遙か前から存在した、いわばディレイ・サウンドの元祖とも言えるものが「テープエコー」です。

ディレイ・サウンドの元祖とも言えるのが、磁気を使った初期のエコー機たちです。
1950年代半ばに登場したEchorecは回転する磁気ドラムに録音と再生を行う「ドラムエコー」、少し遅れて1959年頃に登場し大ヒットしたEchoplexは磁気テープをループ走行させる「テープエコー」で、いずれも60〜70年代に様々なロックミュージシャン、ギタリスト達に使用され、いまや伝説的な存在になっています。
テープを用いた機種では、遅れること約15年、1974年にRolandがSpace Echo RE-201を発表。
現在でも使われるこのモデルは、国産テープエコーとして大人気を博すに至りました。
しかし、様々な面で制約の多いテープエコーは徐々に廃れ、その後、アナログ・ディレイに取って代わられることとなります。


  1. テープエコーの原理
  2. アナログ・モデリング・ディレイの代表的なモデル

関連記事:エレキギター博士
ディレイエフェクターとは?初心者のための使い方、設定方法、おすすめの一台

テープエコーの原理

Roland RE-201 Roland RE-201

テープエコーは非常に原始的な機構を持つエフェクトで、カセットテープの内部にも使われている磁気テープ、あるいは金属テープをループ走行させて、随時録音と再生を行い、遅れた音を得るという仕組みです。
その構造は以下のようになっています。

テープエコーの仕組み テープエコーの仕組み

テープに合わせてヘッドが複数ついており、それぞれ消去(白)、録音(赤)、再生(青)となっています。
ループ状のテープは走行しながら、順番に消去→録音→再生を行います。
録音された音が再生ヘッドに至るまでに時間がかかるので、音が遅れて再生されるという仕組みです。
再生ヘッドだけ複数あり、これらのヘッドを連続して通すことで、2重、3重のエコーが得られます。
一番最後のヘッドだけを使うとロング・ディレイ、最初のヘッドだけを使うとショート・ディレイとなります。
テープのスピードを落とすと、ディレイタイムは長くなり、その逆も可能ですが、再生環境が変わってくるため、得られる音質にも変化があります。

《名機紹介》テープエコーの世界的な定番機種「Roland RE-201 Space Echo」 – エレキギター博士

Roland RE-201の5連ヘッド Roland RE-201の5連ヘッド

テープエコーの欠点と特性

テープエコーの欠点として、テープ自体の劣化、テープ走行時のノイズの混入、走行速度の維持など、一定のパフォーマンスを得ること自体が難しいというところがあります。
テープを張って録音再生を繰り返すのだから、これはある意味で当然と言えるでしょう。
しかし、ともすれば欠点と思われがちな劣化した音やノイズが、音楽的に暖かいとしばしば語られます。
それこそが、テープエコーが支持を受け続ける最大の理由となっています。

また、ギターエフェクターとしてではなく、本来がレコーディング機器として作られた機器では、信号劣化を抑制するためにエコー部分とは別に、高品位なプリアンプを内蔵しているものもあります。
Echoplexのプリアンプ部分に至っては、現在それに特化したモデリングエフェクターが多数存在するほどです。

しかし、現物のテープエコーは高価で巨大な上にデリケートで調整が不可欠と、ギターのエフェクトとして単独で使用するには非常にハードルが高い機器です。

アナログ・モデリング・ディレイの代表的なモデル

近年、デジタル・ディレイの残響音を劣化させてノイズをまぶしてテープエコー風のサウンドを狙ったモデルや、最初からテープエコーのサウンドを目標に制作されたアナログディレイ、果ては過去に使われたテープエコーマシンをシミュレートしたモデリングエフェクターなど、様々な製品が世の中に溢れています。
現在、テープエコーのサウンドを得たい場合、それらを使うのが一般的でしょう。
ここでは、その中から特に評判の高いモデルを、再現する仕組みごとに整理して紹介します。
大きく分けると、磁気テープをシミュレートする「テープエコー再現モデル」、独特の揺らぎを持つ静電式ディレイを再現する「オイル缶ディレイ再現モデル」、そしてバケツリレー素子を使った「BBDアナログディレイ・モデル」の3系統があり、それぞれ得られる質感が異なります。

モデル モデリング元 消費電流 ステレオ入出力 サウンドバリエーション
UAFXStarlight Echo Station Echoplex系テープ
BBDアナログ
デジタル(3種統合)
400mA 対応 3モード(Tape/Analog/Precision)
UAFXGalaxy 74 Tape Echo & Reverb Roland RE-201 Space Echo 400mA 対応 テープヘッド3種切替+スプリングリバーブ
UAFXOrion Tape Echo Maestro Echoplex EP-III 250mA モノ テープ状態3種(Mint/Worn/Old)+Wonk
strymonEl Capistan(V2) ヴィンテージ・テープエコー全般 300mA 対応 テープ機3種×各3モード+リバーブ
strymonVOLANTE 磁気ドラム
テープ
スタジオエコー
300mA 対応 3エコータイプ(Drum/Tape/Studio)+リバーブ
strymonDeco(V2) テープマシン 300mA 対応 テープ飽和+ダブルトラッカー(2ボイス)
strymonEC-1 Maestro Echoplex EP-2 250mA 対応 単一ヘッド特化+プリ2種/300プリセット
Jim DunlopEchoplex Delay EP103 Maestro Echoplex EP-3 240mA 対応 Ageモードで経年変化を付加
CatalinbreadBelle Epoch + Maestro Echoplex EP-3 200mA モノ テープ摩耗3プログラム+タップテンポ
JHS Pedals3 Series TAPE DELAY テープエコー全般
(RE-201/EP-1等)
65mA モノ Flutterトグル(標準/ヴィンテージ)
Empress Tape Delay テープエコー全般 280mA モノ テープエイジ3種
strymonOlivera ヴィンテージ・オイル缶エコー 250mA 対応 ヘッド3種(Short/Long/Both)/300プリセット
Old Blood Noise EndeavorsBlack Fountain Stereo オイル缶ディレイ 350mA 対応 L/R独立+6サブディビジョン/プリセット
JHS Pedals3 Series OIL CAN DELAY オイル缶ディレイ 65mA モノ モジュレーション強度2段切替
strymonBrig BBDアナログディレイ
(MN3205/MN3005)
250mA 対応 3ボイス(3205/3005/Multi)/300プリセット
BeetronicsBeeBeeDee BBDアナログディレイ 200mA モノ 3モード(Classic/Lo-Fi/Pitch)
XviveECHOMAN BBD(MN3005)
Deluxe Memory Man系
80mA モノ ディレイ+コーラス+ビブラート

テープエコー再現モデル

磁気テープのループ走行を再現し、独特の暖かみと揺らぎを持つリピートを生み出す系統です。
Maestro EchoplexやRoland Space Echoといった名機を狙ったモデルが中心で、ハイエンド機ほどテープの経年変化やモジュレーションを細かく作り込めます。

オイル缶ディレイ再現モデル

オイル缶ディレイは、オイルを満たした缶の内部で静電的に音を反響させる、テープとは異なる方式の機械式エコーです。
バンド幅が狭く、不規則に揺れる有機的なリピートが持ち味で、近年その独特の質感を再現するモデルが増えています。

BBDアナログ(バケツリレー)ディレイ・モデル

BBD(バケツリレー素子)を用いたアナログディレイは、Deluxe Memory Manに代表される、暖かく滲んだリピートが魅力の系統です。
デジタルのモデリングでBBDの質感を再現したモデルから、実際にBBDチップを積んだ完全アナログ機まで、各社の個性が表れます。