カテゴライズ不能、だけどグッとくるエフェクター特集2020年9月10日

カテゴライズ不能、だけどグッとくるエフェクター特集

エフェクターは音に効果を加えるのが元々の用途ですが、ギターエフェクターの世界には、まるで違う楽器の音を出してしまうものや、自動で伴奏を生成するものなど、もはやエフェクトの域にとどまらない面白い効果が得られるものが多く存在しています。今回はそんなおもしろエフェクターの世界に迫ってみましょう。

Electro Harmonix Ravish Sitar

Ravish Sitar

Big MuffやSoul Foodなど、王道エフェクターが充実するElectro-Harmonixは、別の楽器の音をシミュレートするモデルも多数ラインナップしています。この製品は名前の通り、シタールの音を得るもの。キーを設定することにより、リード音に伴うドローンの響きを自動で追加して近い響きを作り出します。リード音とドローンの響きは別途で音量調整も可能な上、外部ペダルによるピッチベンド効果を上手く使うことで、チューニングのはっきりしないオリジナルに迫る響きを得ることもできます。エレキギターのみならずあらゆる楽器に有効で、公式の動画にはヴィオラでの演奏を見ることができます。


Electro Harmonix Ravish Sitar

ELECTRO HARMONIX Freeze

Freeze

正式名称はFreeze Sound Retainer。その名の通り、一度出した音を止めてそれを無限に再生し続けるという、足下に置くサスティナーといった雰囲気のモデルです。余韻だけを流し続けることができるので、一人多重演奏のほか、ディレイやリバーブとの併用で驚くべき幻想的な空間を作り出すことも可能。踏んでいる間だけ音を伸ばすFastモードの他、音にフェードイン、アウトを掛けるSlowモード、踏んだ時から次に踏むまで音を継続するLatchモードの3種を搭載。ギターのみならずベースで使っても面白いでしょう。

ELECTRO HARMONIX Freeze

ELECTRO HARMONIX The Analogizer

The Analogizer

デジタル楽器のサウンドをアナログらしく加工するもの。サウンドそのものにアナログらしいサチュレーションと温かさを加え、デジタルのクリアーな成分を弱めることで、アナログらしい雰囲気を作り出すことができます。最大26dbのブーストができ、そのゲインアップを利用することで、通常のナチュラルなオーバードライブとしても使用できます。また、デジタルディレイの後に繋ぐことで、高品質なアナログディレイのようなサウンドを簡単に得ることもできます。

ELECTRO HARMONIX The Analogizer

Electro Harmonix KEY9 / C9 / B9

KEY9 / C9 / B9

Electro-Harmonixが誇る鍵盤3部作。それぞれエレクトリックピアノ、Hammond C3、Hammond B3のシミュレートとなっており、いずれのモデルも9種のプリセットが含まれています。KEY9はフェンダー・ローズ、ウーリッツァーなどに代表されるヴィンテージのエレピに加えて、ヴィブラフォン、オルガン、スティールドラムを再現したプリセット。C9、B9のオルガン系については、それぞれドローバーや歪み具合の設定を反映したプリセットを9種搭載しており、いずれもジャズ、ハードロックやプログレッシブロックでも聴き馴染みのあるサウンドばかりです。その中でもC9についてはメロトロンフルートのシミュレートが含まれています。全モデルともに操作はシンプルで、ドライ音とエフェクト音を自由にバランス調整可能。ギターのみならずキーボードで使う事も想定されています。

Electro Harmonix KEY9
Electro Harmonix C9
Electro Harmonix B9

Dwarfcraft Devices Gears

Dwarfcraft Devices Gears

まるでシンセサイザーのような独特な音を作り出すペダル。ベースとなるサウンドはオクターブファズのような歪みですが、1オクターブ、2オクターブ下のサウンドをそれぞれ調整した上で、二系統に分けてフィルターを通すという独自の構造を持ち、説明書きだけでは想像しにくい特異な音を作り出します。後段に付けられたフィルターとレゾナンスは再生する周波数を可変させますが、まさにアナログシンセのように、エクスプレッションペダルを用いてリアルタイムコントロールすることで本領を発揮します。ギター、ベースに使うことで、昨今のEDM等で聴けるうねるように歪んだ重低音のベースや、70年代のカンタベリーロックなどで聴ける破壊的なシンセ音をギターで得ることができます。

Dwarfcraft Devices Gears

Dwarfcraft Devices Memento 生産完了

音を切るためのキルスイッチをパターン化して再生できる新機軸のモデル。コントロールはKillとRe-Killの二つだけが付けられており、Killを踏み込むことで音を消せますが、本体はそのタイミング、回数、音の消えている時間などをメモリーしています。Re-Killを踏み込むことで直近のパターンをもう一度繰り返し、パターンは2倍、4倍速での再生も可能です。トレモロのように一定ではなく、自分が作り出したパターンでミュートのタイミングが操れるため、非常に面白く幅広い使い方ができます。使いどころの難しいペダルですが、自分のスタイルやバンドの音楽性にうまく合わせることができれば、この上なく個性的なプレイが可能になるでしょう。

EarthQuaker Devices Organizer

EarthQuaker Devices Organizer

ギターの音をオルガンのように変えてしまうペダル。ただ上記のElectro-Harmonixの製品とは違い、オルガンそのものの音を出すのではなく、フィルターやオクターバーで音を調整し、ディレイ音を使った重厚なサステイン、レズリースピーカーのような揺らぎを加えることで、それらしい響きを得るというものです。一口に言えばディレイとモジュレーション系を合わせたような働きですが、場を包み込む重厚な存在感、透明感のある独特の音色は、通常の空間系エフェクトでなかなか得られるものではなく、このモデル特有のものと言ってよいでしょう。6つのつまみを装備し、オクターブ上下の音量、ディレイ音、そしてエフェクト音をフィードバックさせるChoirなどをコントロールし、多彩な音色を作ることができます。

EarthQuaker Devices Organizer

MASF Pedals SCM

MASF Pedals SCM

エフェクターと言うよりもノイズを出すための”楽器”。細長い金属の筐体の側面にバネが張られただけのシンプルな設計で、内部に付けられたコンタクトマイクを通して様々な音を発生させます。叩いたり擦ったり、バネを弾いたり、叩く材質などによっても色々な音が出せ、後段に繋ぐエフェクターによってもその音色を劇的に変えられます。公式の動画ではハイゲインなディストーションを繋ぐことで猛烈なノイズの嵐を発生させていますが、大人しめのオーバードライブなどを使っても、また違った趣になり、様々な使い方が楽しいペダルです。

MASF Pedals SCM

MASF Pedals POSSESSED

MASF Pedals POSSESSED

超個性的なペダルを次々作り出すMASF Pedalsの送り出すディレイ。ただのディレイでないところは、そのディレイがランダムで、かつ音の反復をぶつ切れにしたりすることで、音の崩壊を作り出すところ。レベルを意味するHEARINGコントロールのみ制御できますが、ディレイタイムを制御するSMELL、フィードバックを意味するSIGHTは大雑把にしか決められません。中でもディレイを崩壊させていくTOUCHコントロールは秀逸で、このモデルの最大の個性と言えるでしょう。偶然性に身を任せるというところはアート的側面も強く、大胆に使うことができれば面白い表現ができることは間違いありません。

MASF Pedals POSSESSED

Bananana Effects MANDALA

Bananana Effects MANDALA

ディスクの音飛びのように同じ音が断続的に再生される”グリッチ”という現象を意図的に作り出すペダル。原理的には極めて短いショートディレイを無限のフィードバックで繰り返すといったものですが、このモデルはその中に、ピッチのグリッサンド、逆再生のリバース、矩形波の音を繰り返すスクエアなどを含む8種類ものモードを搭載しています。通常のオンオフを行うラッチモード、踏んでいる間だけオンになるアンラッチモードを切り替えることができ、自らの意思で好きなだけ音を止めてグリッチさせる気持ちよさは、このペダルならではの快感です。

Bananana Effects MANDALA

the King of Gear MINI GLITCH

上記のMANDALAと同じく、グリッチに特化したエフェクト。狙ったタイミングでグリッチを引き起こすのがメインのMANDALAとは設計思想がやや異なり、こちらは音を飛ばすタイミングをランダムに設定したり、一定以上の音量が入力されたときのみその音をホールドしてグリッチさせるなど、より機器任せの設定が使えるようになっています。MANDALA同様スイッチを使って意図的に起こすことも可能ですが、公式の動画ではクリーンアルペジオにランダム設定で掛けることで、独特の危うい美しさを表現しており、これらの機器任せの設定こそがこのモデルの真骨頂と言えるでしょう。ドライ音のミックス具合なども調整でき、単なる飛び道具以上に音楽的な使い方を考えられるペダルです。

the King of Gear MINI GLITCH

BOSS EV-30

BOSS EV-30

2系統の出力端子を備えたエクスプレッションペダル。ディレイやコーラスなどの空間系エフェクトや、上に挙げてきたような飛び道具系のエフェクトを使う際に、最大限にポテンシャルを生かすために不可欠となる製品です。なかでもこのBOSSのモデルは二系統の端子による二製品の同時コントロール、歴代の製品でもトップクラスの小型サイズに収めていることもあり、非常に使いやすいものとなっています。

BOSS EV-30

DigiTech TRIO+

DigiTech TRIO+

ギターでのコード伴奏に合わせて、コード進行やテンポを感知、自動でドラムとベースのパターンを作り出して再生してくれるマシン。一人でトリオ演奏もどきができることからTRIOと名付けられています。+(プラス)が付いたものはバージョン2で、ルーパー機能が加わりました。ブルース、ロック、ポップ、ジャズなど、さまざまなジャンルにあわせたものが12種、そして1ジャンルあたりスタイルが12種、計144ものパターンを内包しており、4/4のほか3/4拍子のものにも対応します。アドリブの練習や、ライブでのソロ演奏の幅を広げるなど、使用用途は幅広く、使用者のスタイル次第で無数のバリエーションが考えられるでしょう。AメロとBメロを分けるなど、セクションごとに違うパターンを記憶して、リピートの回数を決めたりスイッチで遷移することも可能。パターンは保存できるため、自作曲のパターンを入れておくことでライブに使う事もできます。データはmicroSDカードへエクスポートすることもできるため、制作のお供としても優秀。別売りのフットスイッチを増設することで、さらに使い勝手が向上します。

DigiTech TRIO+


増え続けるエフェクターの市場において、多彩な効果を得るものは近年増え続けています。なかでもランダムなディレイの効果を使ったものや、別の楽器の音を出すものについては、技術の進歩もあってか驚きの完成度を誇るものばかりです。普通のエフェクターに飽きた方、少し変わったスタイルを模索したい方は、一度試してみると違う世界が開けるかもしれませんよ。